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歌を歌って。


のんびりすれば

そのうち知った顔に会えるはずだ。











「・・・『今』がいつなのか、分かんないけどさぁ。」



ふわぁ。


あくびと共に

燕の口から出た言葉は深刻だった。





――会えたとしても、わかんなかったら意味が無いだろーに。






自分で見ていく、ってのもまた一興。


そういった感覚で詳しい説明を聞かなかったことにいまさら後悔。

まあそれは自分が会いたいと思えばいいだけだと教えられていたがそれもいきなりどうかと思っただけだ。


焦ることはない。

時間はたっぷりある。





「にしてもすげーなぁ。」




自身の体の変化に気付いたのはまず、自分の目の事だった。


ついさっき見つけた島はとんでもなく遠い。

いつもならあんなゴミみたいなサイズのものを見つけることは不可能だったはず。

しかし燕の双眸はそれを捉えていたのだ。


つまりは視力が。格段に跳ね上がっている。



身体能力を上乗せする。



変な感覚だ。


反復練習で身につける一輪車の乗り方をすっと扱えられたらどうだろう。

運動神経うんぬんの問題じゃない。


何か、外側から扱われるような、記憶したことをそのまま実行するコンピュータのような。


ぐるぐる考えるべき問題だが、游月燕はあまり危機感は覚えずに。



「そのうち慣れればいいか」



もともと燕はこういうことを深く考えない、言ってしまえばノーテンキな性質だった。

それに拍車が掛かったのはほぼあの天使のせいだ。





「あの島は――誰がいるのか、なっ」







ズバァン!!



波が跳ね上がり、木の葉のようにちいさな船が突き進む。


その常識知らずなスピードを生み出したのは、燕の歌を聴いていた生き物のしわざ。





「うわわわわゎゎゎぁ!!」






お腹空いたから、あそこの島についてご飯をもらってからまた歌うよ。


――伝わるとは思っていなかったが、どうやら上陸に協力してくれるらしい。




「はやああぁぁぁぁぁい!!すごい!」




よっぽど早くしたいのか、燕を振り落とすぎりぎりのスピードで泳ぐ巨大な海王類。


ブオォォォーーー!!


鯨なのか象なのか判別できない鳴き声でわめき、その道をあけるように割れる波。






「木が除けてる!」

森の妖精の出てくる名作アニメ映画の主人公おねぇちゃんの台詞がうかぶ。


もしくはなんかすごい神様についていった教主様が海に入ったら二つに割れて

逃亡してた人たちが助かって追っかけてた人たちは海に飲まれてバットエンドーって逸話のを。









「あははははははーー!」





誰もいない海に無邪気な笑い声が響いた。









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あきゅろす。
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