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その他小説
いつのトキだって(義トリオ+政宗)
「政宗、資本主義と社会主義の特徴はこの図表に書いてあるぞ。このページとだな……」
「ええいうるさい! 自分でやれると言うただろう!?」
「私は、小十郎殿や孫市殿に政宗の面倒を見てくれと頼まれているのだ。その二人と私の行為を無にするというのか?」
「そんなもの誰も頼んでおらぬわ、馬鹿め!」
「政宗ッ、その言い方はなんなのだ。不義に値するぞ!」
「ふんっ。わし一人でできるから言うただけじゃ」
「……その理論を掲げた学者、名前が違うぞ。それなら、こちらだ」
「なにぃ!?」
 ベランダ付近に設けられたダイニングで、なんだかんだしつつ政宗の家庭教師をしている兼続の姿を眺め、三成はリビングで茶を啜っていた。
 リビングとダイニングには一切隔たりがない。なので、勉強に奮闘している様子が丸見えである。二人の仲は相変わらずのようだ。騒がしいが、見ていて飽きる事はない。
 そこへ、幸村が隣の椅子へ腰掛けてきた。「どうぞ」と皿をテーブルに置き、そこに盛られた黒糖のかりんとうを差しだされる。
「ああ。すまんな」
「いいえ。その……私も、食べたかったので」
「ふ……。そうか」
 二人して菓子を摘み――三成はふと思い出した。
「そういえば、政宗と幸村は同い年ではないのだな。この世では」
 幸村は一瞬何の事だろうかと目をぱちくりさせていたが、すぐに理解したらしい。こくりと頷く。
「……ああ、はい。そうですね。政宗殿は高校生で、私は大学生ですから」
「まあ、見た目で見れば合っているかもな」
 あのなりで大学生だと言われたら目を疑う。そう言いながら、三成は幼さの残る顔立ちをした政宗をちらりと見やった。
 生まれ変わっても右目を失ってしまったらしく、彼はそこに白い眼帯をつけていた。だが、この現世での家族の仲は大変良いと聞く。その話を聞いた時、三成は密かに安堵したものだ。
 それを言うつもりは毛頭ない。おそらく、自分は恥ずかしさと照れ臭さで穴に埋まりたい衝動に駆られてしまう。
 三成がそんな思考に耽っていると、
「……よし」
 不意に、兼続が両手をポンと打ち合わせた。
「今日はこれくらいにしよう。そろそろ夕飯を作る頃合だ。政宗、一緒に食べないか?」
「誰が貴様らと……ッ」
「私の料理の腕前、忘れてはいまい?」
「ぬぅ……」
 悔しそうに押し黙る政宗に、兼続が得意げに鼻をふふんと鳴らした。幸村も負けてはいないが、彼の作る料理はうまい。贔屓目ではなく、三成は純粋にそう思う。
「――だ、だがっ、わしの料理には負けるわ!」
「ならば共に作ろう! そうすれば、もっと美味しくなるぞ! なあ、幸村!」
「はい。私もそう思います」
「幸村、貴様まで……っ」
「鬱陶しい。どうせなら、お前達で作ってしまえばいいのだよ」
「何を言う、三成。お前もだ」
「はぁ?」
 素っ頓狂な声をあげ、三成はとばっちりだと言わんばかりに今生でも知友である兼続を睨みつけた。
 だが、そんな友はそれを華麗に無視してにっこりと微笑んだ。
「そう睨むな、三成。お前も一人でただ待っているのもつまらないだろう。なら、皆で仲良く作業を共にしようではないか。そちらの方が楽しいぞ?」
「そうですよ。三成殿もご一緒に作りましょう」
 親しい二人の誘いを断るほど、三成は冷酷ではない。
 ――むしろ、親しければ親しいほど甘い。
 実際、目を逸らしながら「まあ……お前達がそう言うのならば……」と小さく頷いたのが、その証拠である。
 そんな友の姿に、幸村と兼続は互いに顔を見合わせて嬉しそうに目を細めた。
「――よし! では、今から買いにいくとしようか!」
「今からだったのか!?」
「スーパーはどこが良いでしょう?」
「それくらい分からぬのか馬鹿め。……この近所のスーパーで野菜の安売りとしておったわ」
「おお、さすがだな政宗! なら、そこへ買いに行くとしようか」
「飲み物と菓子の補充もせねばならないな……」
「そうですね。夕飯を食べたら、何しますか?」
「マリオパーティーはどうだ?」
「そこはスマブラじゃろう!」
「なんと野蛮な!?」
「やかましい! ゲームの話など後ででいいのだよ!」
「そ、そうですねっ。早く買いに行きましょうっ」
 たわいもなくがやがやと騒ぎながら、四人はアパートを出て買い物へとくりだした。
 ――そこで菓子を何にするかで三成と政宗が喧嘩しかけたのだが、それは、後に行われる保護者達の酒飲みで話のネタになったのだとか。
 なんだかんだいって、いつでも、いつまでも仲良し。

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あきゅろす。
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