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とんでもないサプライズを提供します(カイユウカイ?)
(My設定のVY2勇馬がでてきます)
2月17日の朝。カイトは未だにベッドの中ですやすやと寝息をたてていた。
そんな中、静かに扉を開けて薄暗い部屋の中へ侵入する人影があった。
人影は気配もなくベッドへ近寄ると、ギシリと微かな音をたててカイトへと身を乗り出す。
「……ん?」
物音に目を覚ましたカイトが一番最初に見たその人影は、
「……ゆー、ま?」
「おはよ、カイト兄さん」
勇馬――真っ白な髪に真っ青なメッシュが目立っていて、常に眠たそうな青紫の瞳と白い肌が印象的な、とにかく真っ白なボーカロイドだった。
最近、自分好みにカスタマイズが可能という売りで量産された最新型だ。カイトにとって後輩であり、弟にあたる。
そんな勇馬の顔が、三センチぐらいの距離にあった。
寝ぼけたまま見つめ合うこと、しばし。
「――うわっ!?」
布団を捲りあげる勢いで起き上がると、勇馬もまた素早い身のこなしで上半身を起こした。びっくりした様子もなく、相変わらずの覇気のない目でこちらを窺っている。
「……え、え? なんで? なんで勇馬くんがおれの部屋に居るの??」
「だって……鍵、空いてたから。カイト兄さん、なかなか起きないし」
「……あー、うん。そっかぁー」
言葉少なにそう語る遊馬に、カイトは頭を押さえながらうなだれた。
「別にね、普通に起こしてくれればいいんだよ?」
「メイコ姉さんが、こうした方がカイト兄さん起きるよって」
「めーちゃんのばかぁぁぁぁぁぁあっ!!」
とことん自分をからかうのが大好きらしい――カイトは姉であるボーカロイド・メイコを呪わずにいられなかった。ベッドに突っ伏し、涙目で思い切り叫ぶ。
変な事を後輩に教えないでいただきたい。
「……なんか、ごめん」
「いいよ。遊馬は悪くないから」
「なら良かった」
ふ、と口元を緩ませて微かに微笑む悠馬にカイトは優しく笑みを返す。
貴重な彼の笑顔を見られたのだし、このくらいの事は根に持たず水に流せるものだ。
「じゃあ、早く行こう」
「ちょ、ちょっと待って」
ベッドから下りてぐいぐいと手を引っ張る勇馬を制し、カイトは慌てて寝間着の服を脱いで黒いシャツを頭から被った。
ジャージは――まあ、いいか。
「よし。行こうか」
「分かった」
勇馬の先導で一階のダイニングまで下りる瞬間、彼がカイトの方へと振り向いた。きょとんとした顔で紫の瞳をじっと見つめる。
「カイト兄さん」
「?」
首を傾げるカイトの腕を引っ張り、勇馬の薄い唇が一瞬だけカイトのそれと重なった。目を見開く彼に、無表情のままの顔が離れていく。
「……ゆう、ま?」
「一足先に」
「へ?」
「誕生日おめでとう、カイト兄さん」
ぴしり、と固まるカイトにそう告げ、勇馬は何事もなかったかのように駆けて行った。「カイト兄さん、今来まーす」という声が向こうに響く。
(おれに……キス……!?)
自覚した途端、ボッと音をたてて顔全体が熱くなるのを感じた。
真っ赤な顔のまま、カイトは自分の頬を押さえる。
「え? え? えええぇぇぇぇぇー……?」
元へ様子見にリンとレンの双子がやって来るまでカイトはパニクる頭を抱えて立ち尽くしていた。
「ちょっとゆーま! カイ兄に何したのよ!」
「リン姉さん、俺は別に何もしてない」
「だって、カイ兄真っ赤になってたよ!?」
「……ああ。誕生日おめでとうって、ちゅーした」
「「「!!!?」」」
「……?」
HAPPY BIRTHDAY KAITO!
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