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その他小説
悪くはない朝。(女マスター+KAITO)
 朝、彼女は早起きをしてパンと目玉焼きを用意するのが日課だった。今日も朝食を準備し、後は“彼”を起こすだけなのだが――

「お寝坊さんめ……」

 ふう、とため息をついた彼女はやれやれと肩を竦めながらも二階へと上がっていく。
 “彼”が眠っているであろう部屋の前に立ち、コンコンとドアをノックする。

「おーい、カイト?」

 返事なし。

「また寝坊助なのかな〜?」

 何も聞こえてこない。

「まったく……」

 鍵のかかっていないドアをガチャリと開けて、彼女は部屋の中へと入っていった。
 室内は薄暗く、その奥ではベッドの上でタオルケットにくるまる物体が。
 そのタオルケットの上から手を置き、軽く揺すってみせる。

「朝だよ〜、起きて〜」
「ん、んん……」

 僅かな呻き声があがったかと思うと、その物体がゆっくりと動き出した。タオルケットの端から鮮やかな青色の髪が顔を覗かせる。

「ます、たー……?」
「おはよ」
「おはよう、ございます……んぅー」

 寝ぼけ気味に挨拶を返して上半身を起こしたのは、髪も瞳も真っ青な長身の細っこいイケメンだった。爽やか系の、わんこみたいな男子だ。
 ただし、人間ではない。人型をしたロボットで、しかも歌に特化したアンドロイド――ボーカロイドなのだ。
 人間の食べ物は栄養にはならないが、一応食べられるので一緒に食べたりしている。

「朝ごはんできたよ」
「あ……すみません、ありがとうございます」
「私の日課だからいいんだよ。一緒に食べよっか」
「はい!」

 明るく無邪気な笑顔をぱぁっと咲かせて頷く彼を見たら、誰だって口元を綻ばせてしまうに違いない。

「コーヒーはカイトが淹れてね」
「了解です、マスター」

 自分の後を嬉しそうについてくるボーカロイドのカイト。
 こんな何気ない朝。

 悪くはない、よね?




(一家に一人、ボーカロイド・KAITO推奨:私)

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あきゅろす。
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