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その他小説
二つの世界が交じり合う時
 政務が終わり、ひっそりと城を抜け出した政宗が馬を走らせていた時だった。
 
「…………ん?」
 
 地面が何やら光っている。昨夜に雨が降ったため、水溜りが陽光に反射しているだけなのだろうと思った政宗は、そのまま素通りしようとした。
 瞬間――
 底にぽっかりと真っ暗闇の穴が開いた。
 
「what!?」
 
 直前に馬をとめようと試みるが、頭の片隅では、無駄な抵抗だと冷静に判断している。しかし、それでも何とかしようとするのは、人間としての性[さが]なのか。
 迫り来る巨大な穴を前に、政宗は舌打ちをした。
 
「……shit!」
 
 どうにでもなりやがれ!
 政宗はあえて馬を加速させ、自ら穴へと飛び込んだ。
 情けないが……もしこれが自分の最期になったとしても、小十郎が何とかしてくれるだろう。それに、新入りにしたあの柴田勝家という男も、力になるに違いない。
 深く深く落ちていると同時に遠のいていく意識の中、政宗はそっと目を閉じた。
 
 
 
 ∞
 ――自分の目の前には、三日月を模した前立てをあしらった兜を手に横たわる、茶髪に隻眼の青年がいた。
 青い甲冑を身に纏い、六本の刀を台頭した長身痩躯の男――恐らく、その体は見た目に反して鍛えられているに違いない――を見下ろし、彼は地面に片膝をつく。
 その青年に寄り添うように、一頭の白い馬が顔を摺り寄せ、心配そうに見つめている。
 彼はそっと微笑んだ。
 
「大事な主なのだな」
 
 その言葉に答えるように鼻を鳴らす馬の頭を優しく撫で、彼は青年の肩をゆすった。
 
 
 
 ∞
「起きてくれ。もう一人の『伊達政宗』――」
 
 低く朗々とした男の声につられるようにして、政宗は意識を覚醒させた。
 一番最初に目に飛び込んできたのは、己の愛馬の顔だった。心配そうに揺らめく瞳に、政宗はニッと笑ってみせる。
 
「don't worry.気にすんな」
 
 鼻面を撫でてやるとすりすりと擦り寄ってきた。可愛い奴だ。と、政宗は目を細める。
 そして、政宗は自分を見つめる男がいる事に気づいた。ガバッと身を起こし、目を眇める。
 鮮やかな漆黒の髪を高い位置に結い上げ、薄墨色の瞳をした背の高い男だった。白い肌は雪国生まれの証か。並大抵の者ではない事は明らかだが、しかし、こんな男など見覚えがない。
 警戒心を露わにする政宗に、男は朗らかに微笑した。
 
「怪我はないようだな。安心した」
「……テメェは一体何者だ?」
「私か? 私は直江兼続! 上杉の将であり、義と愛に生きる義士である!」
 
 途端に元気よく名乗った男の声の大きさに眉を潜めた政宗だったが――直江兼続だと?
 ぽんっと頭の中に浮かんできたのは、無敵無敵と言いながら「無敵なのにやられたー!」などとあっさり吹っ飛ばされている上杉の武将だった。しかし、目の前にいる男とは性格も外見も違う。もちろん、強さだって桁違いだろう。
 ますます警戒する政宗の気配に気づいたのだろう。兼続という男がわたわたと両手を振る。
 
「しっ、信じられないのも無理はない! 無理かもしれないが、信じてくれ!」
「どこをどうやって信じろっつーんだよ……」
 
 しかしながら、男の目は嘘を言っているようには見えない。純粋な光をたたえるその瞳に、政宗は好敵手たる真田幸村を彷彿とさせた。真田は真っ赤に燃える紅蓮を思わせるが、この男は真っ白な純白をイメージさせられる。
 しばらく兼続の瞳を見つめていた政宗は、やがてふっと肩の力を抜いた。
 
「……OK.信じる」
「本当か!? 良かった!」
 
 ふふ、と嬉しそうに笑う兼続に、政宗は調子の狂う野郎だと肩を竦める。
 兼続はやおら立ち上がると、いまだ座り込んでいる政宗へ手を差し出した。
 
「立てるか?」
「ああ」
 
 ありがたくその手を借りて立ち上がった政宗はまだ自分が名乗っていない事に気づき、「オレは……」口を開いた瞬間だった。
 振り向いた兼続が、口元を綻ばせる。
 
「知っている。もう一人の『伊達政宗』だろう?」
「what!? そりゃどういう意味だ?」
 
 怪訝そうに首を傾げる正宗に、兼続は再び笑って言った。
 
「まあ、その話は移動しながら説明しよう」
 
 
 
 ∞
 政宗は自分の一歩後ろをついて歩く兼続から受けた説明を頭の中で整理し、ゆっくりと口を開いた。
 
「つまり――アンタが言うこの世界……無双の世界は、オレがいた場所と同じようで違うparallel worldってコトなんだな?」
「世界の呼称は仮定だから真に受けるなよ? ……そなたの言い方から察するに、まあ、そういう事だ」
「あったまいいなァ。気に入りそうだぜ」
 
 会話をしながら、政宗は兼続の事を気に入り始めていた。政宗の問いに対する迅速で的確な返しといい、説明の明確さと分かりやすさといい、頭の回転の速さが窺える。
 もしかしたら小十郎と張り合えるかもな……と、政宗は自然とにやつくのを感じた。
 
「お前、もしかして軍師か何かか?」
「上杉を任されている」
「……なるほどな」
 
 つまり、軍略も政務も兼続一人の肩にのしかかっているのだ。彼のさじ加減一つで決まってしまうのだから、責任重大だろう。しかし、それは主君が彼に全幅の信頼を寄せている証でもある。彼に任せれば大丈夫だと、そう思わせるほど、この男には才覚が秘められているのだろう。
 その主君は、兼続と絶対的な絆で繋がっているに違いない。
 自分と、小十郎のように。
 
「小十郎、怒ってるかもしれねーなァ……」
 
 あーあ、とけだるくため息をつく政宗に、兼続がくすりと笑う。
 
「何か怒らせる事でもしてしまったのか?」
「ahー……政務終わったあとに黙って城出た」
「ふふっ。やんちゃなのだな」
 
 やんちゃ。政宗をそう形容して笑う兼続を、肩越しに振り返りながら睨みつける。
 自分よりも年上に見える気もしないではないが、なんだかムカついて仕方がない。
 
「How old are you?」
「ん?」
「……アンタ何歳なんだ?」
「私は24になるが」
「オレより年上なのかよ」
 
 確かに年上だ。
 
「そなたは?」
「オレは19だ」
「おお、そうだったのか? すまぬ。てっきり、もう少し年が上であるように見えたのだが」
「気にすんな。オレも、アンタのコトもう少し年上だと思ってた」
「はは。よく言われる」
 
 出会って間もないというのに、兼続と政宗は仲睦まじく会話を楽しんでいた。
 互いに笑い合いながら歩みを進めていると、近づいてきた城を見上げて兼続が「もうそろそろで着くな!」とどこか楽しそうに声をあげた。
 
「あれが大阪城だ! みなが待っているぞ!」
「みな……?」
 
 きょとんとする政宗に、兼続は輝くような笑顔でニコニコしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


あ と が き
 
アニバサにハマってすぐに沈下したのですが…再び再熱しまして、クロスオーバーしてみました。
ゲーム、してません…やりたいのですがorz
 
単なる好きキャラ同士の顔合わせをしてみました←
BSRは筆頭、無双は兼続が大好きなもので…
でも筆頭の英語難しい!
 
続くかどうかは不明です←
 

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あきゅろす。
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