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その他小説
ブラックコーヒー(アースコ)
「あれ?」

 バラムガーデン、寮内にあるスコールの部屋。
 スコールが使っている机の上に置かれている白いマグカップを見て、アーヴァインは小さく首を傾げた。

「スコールってコーヒーはブラックで飲むんだ」
「甘いのは苦手だ」

 額に傷を持つ少年から呟かれる短い言葉に、アーヴァインは苦笑しつつ小さく肩を竦める。
 確かに、彼が甘い食べ物を食べるところなんて見たことがないなぁ、と思い返す。自分はそんなことはなく、むしろ甘い物が大好きなわけで。
 こうやってコーヒーを飲む時も、ミルクと砂糖を入れないと飲めないタチなのだ。
 キスティスから『まだまだ子供ね』なんて、からかわれたなぁ。

「僕は苦いの飲めないや」
「お前らしくていいと思うが」
「……え?」

 意外な一言にぱっと彼の方へ向くと、スコールはしれっとした顔でこちらを見ないままコーヒーを啜っていた。
 ぽかん、とした顔を晒していると『間抜けな顔だな』と言われたが、今はそんな事どうでもいい。

「そんなこと言われたの初めてだよスコールー!」
「ぐっ!?」

 一つ年下で誰よりも大人びている我らが班長からそんな風に言われたことが嬉しくて、アーヴァインは嬉しさのあまりスコールへしがみつくように抱きついた。
 ぽやぽやと花をまき散らしそうな雰囲気を醸し出すアーヴァインに、やや呆れた顔をしながらも、スコールは彼をふりほどこうとはしない。そのまま、机に本を広げている。
 冷たく接しながらも、結局は優しく受け入れてくれる彼に、アーヴァインは愛おしげに目を細めた。それから、耳元で名を呼ぶ。

「スコール」
「なんだいきな……、っ!?」

 やれやれとこちらへ顔を向けた少し幼さを残したスコールの唇へ、アーヴァインは軽く自分のそれを重ねた。
 それからぱっと距離を空け、微かな温もりを残す自分の唇へ指を這わせる。

 ――なるほど。

 この苦さは、嫌いじゃない。

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あきゅろす。
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