その他小説
甘やかして甘やかされて(4,7,8)
……なんだこれ。
買い物から帰って来たスコールの目の前で、金と銀が豪勢に散らばっていた。
簡単に言うと、金髪の男と銀髪の男がリビングの床に横たわって眠っていた。
金髪の男がクラウド、銀髪の男がセシルだ。二人して綺麗な顔を無防備に晒してすやすやと寝息をたてている。
――なんでこんな所で……とにかく、まずは荷物片付けないと何もできないな。
両腕に紙袋を抱えている状態では何もできない。スコールは二人を起こさないようにそっと移動してリビングを横切り、ダイニングを通過してキッチンへと向かった。
全ての物を整理して再び戻ってくると、
――まだ寝てるのか。寝るなら自分の部屋で寝ろよ。このままじゃ風邪ひくだろ……ティーダやフリオニールが心配するぞ。
――……というか、他の奴らも真似てここで寝だしたらどうするんだ?
いまだにくーくーと眠る年上二人に、スコールはため息をついた。
叩き起こしてやろうか、と考えて、ふと気づく。
この二人がこんなに熟睡するのも無理はない。
――こいつら、昨日まで一週間も探索に行っててやっと帰ってきたんだったな。
――なんだか、起こすのも忍びないな……確か、余りの毛布あったな。持ってくるか。
治療室となっている部屋から毛布を二枚持って来たスコールは、仲良く眠り込むクラウドとセシルへ音をたてないように忍び寄り、そっと毛布をかけた。
どちらも中性的な顔立ちで、つい綺麗だな≠ニ感心する。なのに体格は立派な戦士のそれなのだから、細身であるスコールは少し嫉妬してしまう。つい、口をへの字に曲げて二人を見下ろす。
瞬間、二つの手がスコールを捕らえた。そのままぐいっと引き倒される。
「なっ……うわっ!?」
不意の出来事に対応できず、踏ん張る事もできずに床へ――倒れこむような事はなく、セシルとクラウドの腕の中へすっぽりと収まった。
訳が分からずに混乱するスコールの耳に、クスクスと笑うセシルとクツクツと忍び笑いを漏らすクラウドの声が届いた。
「!? お、起きて――」
「たった今起きたところだ」
「毛布、ありがとう」
二人の声はややのんびりとしていて、まだ寝ぼけている事がよく分かる。基本ノリのいい彼らの事だ。毛布をかけた後、じっと見つめてくる少年に悪戯心が疼いてつい手を伸ばした――という事なのだろう。
スコールはジタバタともがきながら左右の秀麗な顔を睨みつけた。
「起きたなら自分の部屋で寝ろ!」
「めんどくさいな」
――面倒臭がるな!
即座に駄々をこねたクラウドに内心つっこみ、スコールはセシルへ顔を向ける。
甘い笑顔だった。
「スコールもここで寝ちゃおうよ」
「はっ!?」
まさかの誘いに、スコールは戸惑いを隠せない。セシルだったら部屋に移動すると思っていたのに……!
――というか……他にもいろいろしないといけない事があるだろ……!
そんな心情を察したのか、
「大丈夫だ。掃除は俺がして、洗濯はセシルがやった。夕飯の支度も終わってる」
「みんなが帰ってくるまでゆっくりできるようにしたんだ」
用意周到すぎる。
唖然とするスコールの両隣で、クラウドとセシルが囁く。
「まだ時間はある」
「スコールも疲れてるでしょ? 寝た方がいいよ」
「いい! 寝る時は自分の部屋で寝る! いい加減あんた達も自分の部屋で寝ろ!」
「「いいからいいから」」
優しくなだめられつつそれなりに強い力で押さえつけられた。純粋な腕力では二人に敵わないスコールは、なす術もなく床へ逆戻りする。
――殴ってやろうか……!
だが、クールに見えて熱血で仲間思いな常識人のスコールに、年上の二人に対してそんな事ができる訳もなく。
楽しそうに嬉しそうに笑うクラウドとセシルを見て、少年は仕方ないといった具合に力を抜いた。
ぶっきらぼうに呟く。
「……今回だけだからな」
「ありがとう。スコール」
「寒くなると悪いから、お前にも毛布かけないとな」
「そうだね。風邪ひかないようにしないと」
「……」
端っことはいえ、二枚分の毛布がスコールにかけられる。彼はやや憮然とした態度をとりつつ、うつ伏せになっていた体を仰向けに直した。
逞しい二人の腕が、スコールの枕となって頭の下に潜ってくる。
――腕が痺れても知らないからな。
「あたたかいね」
「そうだな」
間延びしたセシルとクラウドの声を左右から聞きながら、スコールは自分が眠気に襲われている事に気づく。
――疲れてるなんて、思わなかったのにな……。
だんだんと重くなっていく瞼を素直に閉じ、スコールは案外あっさりと眠りへと落ちていった――
……年相応の幼い寝顔を晒して眠る少年の顔を見つめ、セシルとクラウドは互いの顔を見合わせた。
穏やかな眼差しで、口元を綻ばせて。
「寝たな」
「よかった……スコール、疲れてるのに無理してる感じがしていたから」
「いや。むしろ、自分が疲れているのに気づいてなかったみたいだな」
「少しでも、こんな風に気を緩めてくれるといいんだけど」
「少しずつ、させていけばいいさ」
「そうだね」
兄のような雰囲気を醸し出す二人はそれぞれスコールの頭を撫で――
それから、三人の安らかな寝息がリビングで重なって響いた。
甘やかすセシル・クラウドと知らずに甘やかされるスコール。
帰還した仲間達はきっとびっくりする。ウォーリアさんはきっと許してくれる!!
もー478好きすぎる…いや、皆大好きだけど!
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!