[携帯モード] [URL送信]

その他小説
もう、叶わないけれど(012:7+249)
  カオスのしもべとして召喚された俺が、願ってはいけないことなのかもしれない。
  だけど、願ってしまう。
  ティファ……
  そして、あいつの仲間であるコスモスの戦士達に……
  どうか、
  輪廻の終わりを……
 
 
 
 とある時空の歪みの中。
 クラウドが崖の上からどこまでも続く枯れ果てた大地を見下ろしていると、遠くから爆発音と剣撃の音が風に乗って微かに聞こえてきた。
 何気なしにそちらへ顔を向けて――クラウドは心の底から後悔した。
 関わらない。
 そう、決めていたのに。
 
「なんだあの大群は……あいつらを殺すつもりか……?」
 
  いや、そのつもりだから、あんな大群で追い詰めているのか。
 自分もカオスの戦士であろうに。口元に、そんな自嘲じみた笑みが浮かぶ。
 クラウドが見つめる視線の先で、大量のイミテーションに囲まれながらも逃げ続けている三人のコスモスの戦士がいた。
 銀髪の白騎士はセシル、赤いバンダナの男がフリオニール、金髪に尻尾を生やした少年がジタン――確か、そんな名前だったはずだ。
 傷だらけであっても、仲間の元へ帰還しようと敵を払いのけながら走り続けている三人。
 クラウドは、ただそれをじっと眺めていた。
 傍観しながら、思考に耽る。
  あいつらが死んだら、悲しむだろうな。コスモスの奴らも、ティファも。
  皇帝は喜ぶんだろうが、ゴルベーザやクジャは、悲しむかもしれない。
  俺だって……もう、見殺しにするのはたくさんなんだ。
 気づけば、クラウドは手に馴染みある大剣――バスターソードを握りしめていた。
 
「――星よ!」
 
 クラウドの叫びに、いくつもの小さな隕石がイミテーションの群れへ降り注ぐ。
 突然の事に足をとめるコスモスの戦士達をよそに、くぐもった悲鳴や絶叫が大地にこだましていった。
 たった一撃。それだけでクラウドは、イミテーションの大群を圧倒して全てを屠ってみせた。
 砕け散る水晶のかけら。呆然とそれを見つめる戦士達の顔――それらを視界におさめつつ、クラウドは彼らの前に着地した。役目を終えたバスターソードを粒子へと変える。
 敵である男の出現に、戦士たちがそれぞれの武器を構えるが、その怪我では戦える状況ではないだろう。
 警戒心を露わにする三人へ、クラウドは冷静に声をかけた。
 
「……無事みたいだな」
「え?」
 
 セシルの目が瞬く。
 それもそうだ。クラウドは自分を嘲笑った。敵である自分が心配するなんて――酷く、愚かしい。
 
「もう少し先に行けば出口がある。そこから行けば、聖域はすぐそこだ」
「ちょ、え?」
「ほら、これも使え」
「うわっ」
 
 ぽかんとした顔を晒すジタンを横目にポーションをフリオニールへ投げ、クラウドはすぐさま三人へ背中を向けた。用事は済んだ.そのまま立ち去ろうと足を踏み出すが、
 
「待ってくれ! なぜ俺たちを助けたんだ? 敵なら、むしろ好都合だったはずだ。なのに……」
 
 フリオニールの言葉に、クラウドは歩き出そうと上げていた足を地面へ下ろした。
 振り返れば、瑠璃色と、金色と、青色の目がじっとカオスの戦士である自分を見つめていた。
 その真っ直ぐさが、痛い。
 
「……もし……」
 
 彼らに押されたかのように、クラウドは口を開いていた。
 
「あんたらが死んだら……仲間が悲しむだろ」
 
 自分の顔は、普通だろうか。
 クラウドは自分の顔が悲しげに泣きそうに歪められている事に気づかないまま、三人の姿を視界から外した。
  俺が倒されたら……死んでしまったら……誰か、悲しむのかな。
 カオスの奴らが悲しむところなんて想像できやしないけれど。
 
「俺の剣の錆になりたくなかったら、さっさと行け」
「なーんでさぁ……なんでお前みたいな奴がカオス側なんだろうな?」
 
 ジタンの声に、再びクラウドの動きがとまる。
 
「そうだよ。もし、貴方みたいな強くて冷静な人がいてくれたら心強いのに」
 
 セシルの言葉に、一瞬自分がコスモス側にいたらと言う想像をしかけ――クラウドはそれを首を左右に振る事で振り払った。
 それは夢のような世界で、夢のような願い。
 
「……興味ないね」
 
 嘘を吐き出して、クラウドは今度こそ本当に歩き出した。
 興味なさそうに。
 逃げるように。
 その背中に、三人が声を叩きつけてくる。
 
「おい! 礼も言わせてくんないのかよぉー!」
「ありがとう! 助かった!」
「貴方も気をつけて!」
 
 ――クラウド!
 三人から名を呼ばれて、クラウドはつんのめった挙げ句に盛大にずっこけそうになった。
 たたらを踏みながらも、何とか持ちこたえる。動揺が半端じゃなかった。
  なんで知ってる!? 名乗った覚えは……
 脳裏に明るく笑う黒髪の幼なじみが浮かんできて、クラウドは肩を竦めた。
 
「しくじったかな……」
 
 でも、名前を呼ばれた事が思いのほか嬉しくて。
 いつか、三人に名を呼ばれた時のような、暖かい気持ちが溢れるような世界を夢見て――
 ――そんな日などやって来ない事を理解していながらも――クラウドは、果てない大地を踏みしめて行った。
 
 


こんなことがあってもいいと思うんだ…
クラウドって優しすぎるからいろいろ悩むのかなーって思ったり
だからこそ、罪の意識とか感じちゃうんだろうね
 

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!