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それくらいには仲の良い俺達(18000HITフリーA/義トリオ+α)
ぱしゃり。
振り上げられる足に、太陽の光を反射してキラキラと輝く水しぶき。濃い緑の匂い。爽やかな風。降り注ぐ陽光。川のせせらぎ。はしゃぐ友の声。
――ああ。なんて青春。
……。……なんで、
「二十歳にもなって何故子供みたいに川遊びを……」
「良いではないか三成! 楽しいぞ!」
「三成殿も遊びませんかー?」
「断る!」
わいわいとはしゃぐ兼続と幸村へ叫び返し、三成は大きくため息をついた。その手には、肉の乗った皿とトングが握られている。
その隣では、清正が野菜を網に乗せて焼いている途中だった。
「夏休みくらい、はしゃいだっていいだろう」
「だがな……っ」
「お前みたいに四六時中頭を使う馬鹿にだって、罰は当たらんさ」
「……清正」
「なんだ」
「そんな口を叩くと痛い目を見るぞ」
「お前に言われたくない!」
それもそうだ。一応、自分の発言で反感を買っているという自覚はあるため、吠える清正に言い返す事はしなかった。
三成が辺りを見渡すと、兼続と幸村の方へ「俺も混ぜろー!」とほざきながら駆け寄っていく正則の姿が見えた。少しは手伝え、と言ってやりたい。
――大学の休みは長い。それを利用して少しは息抜きとして遠出をしようといったのは、確か兼続だったか。言いだしっぺが遊んでいるとはどういう事なのか。
……いや、用意したのはほとんど彼ではあるのだが。
「正則の奴は手伝う気ゼロか」
「幸村とは大違いだ。幸村は手伝ったと言うのに……だいたい、兼続だって少しは……!」
「いや、出費してくれたんだろ? だったらいいだろ、手伝ってもらうのも申し訳ない」
「ぐ……」
「ほら、お前も遊んで来いよ」
「ぁ。おい!」
ひょいっと皿とトングを清正から奪い取られ、しっしっと犬を追い払うかのように手を振る彼を睨みつけてから、三成は三人の方へ足を向けた。
これは清正から言われたから“仕方なく”行くだけであって、別に兼続らの近くに行きたかったとか、川に足をつけたいという訳ではないからな!
――等と、言い訳がましい言葉をぶつぶつと呟きながら三成が歩き続けていると、
「あっやべっ」
「ぶっ」
正則の巻き上げた水しぶきが、三成の顔面にかかった。その細面や赤茶の髪が水に濡れ、顎先や毛先からぽたぽたと雫が垂れる。
「大丈夫か三成!?」
「三成殿、目に入ったりはしていませんか!?」
慌てて心配する二人に対し、ぶっかけた張本人は、
「ぎゃはははは! 頭でっかちずぶ濡れでやんの! にっぶ! にっぶ!」
「…………」
腹を抱えて大爆笑していた。反省の色すらない。そして沈黙したままぷるぷると拳を震わせている三成にも気づかない。
「くらえ屑がっ!」
「ぎゃ――――――っ!?」
まさかの飛び蹴り。
蹴りを喰らった正則の体が後ろへ吹っ飛び、川の中央付近へ飛沫をあげて落ちた。若干深い場所だった気がしたが、無駄に丈夫だから大丈夫だろうと結論づける。
正則殿っ、と駆け寄っていく幸村は真面目で健気だ。後輩として誇らしい事この上ない。その爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
……誰にとは、言わないが。
「……さすがにやり過ぎではないか?」
「馬鹿にはあれくらいがちょうど良いのだよ」
ふん、と鼻を鳴らし、三成は大きな岩に腰掛けて足を川に浸した。予想以上に冷たくて、ぶるりと体を震わせる。
幸村に助け起こされた正則が「っの、頭でっかちぃぃぃぃ!」と憤慨している。三成の眉間に皺が寄り、兼続は苦笑し、清正がため息をついた。
「怒りたいのは俺の方だというのに……」
「まあ、謝らなかった正則殿にも非はあるが……」
「餓鬼かあいつは……」
そして――くっ、と清正が小さく笑った。
「騒がしいな」
「全くだ。……おい、バーベキュー始めるぞ!」
そういえば、奴が「飯ー!」と怒りを忘れて食いついてくる事を把握しているくらいには、まあ、長い付き合いなのだ。
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