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魔女の気遣い(スコリノ)
バラムガーデンのSeeD寮。
そこはスコールの部屋があり、今はそこのベッドで熟睡していた。
――そこに。
「スコール。スコールってば!」
「ん……?」
スコールがまだ重たい目蓋を押し上げて目を開けると、そこには青い服を着た黒髪の少女――リノアが立っていた。
その身、実は魔女でもあり、スコールはそんな彼女を守る『魔女の騎士』だったりする。もちろん、自分が望んだことだから、後悔はしていない。
そんなリノアがにっこりと微笑んだ。
「おはろースコール。今日の寝顔も可愛かったぞ?」
「……」
いつからいたんだ、と言いたいところだが、まだ寝呆けている頭がうまく働いてくれない。
そんな頭を抱えていると、リノアから元気な声で「行くぞスコール!」と言われた。
――行くって、どこにだ?
それ顔に出てしまっていたのか、ずいっと顔を近付けられた。気圧されるように、スコールも半身を仰け反らせる。
「エスタよ、エ・ス・タ! たまにはお疲れ気味の騎士サマに休んでもらおうという、素敵な魔女サマからのご提案でーす」
だめ? と首を傾げながらきいてくるリノアに、スコールは密かにため息をついた。いつもながら強引で、無理矢理にでも自分を引っ張っていこうとする。
でも今回はそれを振り払う気にはならなかった。
――たまにはいいかもしれないな。
「……皆で?」
「もちろん!」
「……。その前に、飯を食わせてくれないか?」
「いいですともいいですとも! さあ、行くぞスコール!」
嬉しそうにはしゃぐリノアに引っ張られながら、スコールは微かに、でも、しっかりと笑みを浮かべていたのだった。
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