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「ね、ね、誰?」
「!?…い、伊藤ぉ!!お、お前早くしないと顧問にどやされるぞ!ほ、ほらほら。部活行け!部活」
俺は慌てて時計を指差す。針はカチコチと規則正しく動き短針は4時をとらえ、長針は12と1の間を指していた。
部活集合時間は4時。
俺のバスケ部と涼のバレー部は比較的運動部のわりに緩いので4時を少しくらいすぎてもとやかく言われる事はないけど、伊藤のサッカー部は時間厳守。
厳しいで有名だ。そろそろヤバイんじゃないかと思う。
ちなみに俺と涼は学校の制度で月曜日の部活が無い日だ。
「うっわ!4時過ぎてんじゃん!!?タイミンブ悪ぃ!!坂木あとでちゃんと教えろよ!!じゃぁな!!」
本当にヤバかったみたいで伊藤は、カバンを背負いなおして廊下をダッシュで走り去りながら置き台詞を置いていった。
「せわしないなぁ…」
伊藤がいなくなり教室が静かになりはじめて、ふいに抱きついたまま固まってる涼の存在を思い出す。さっきから何もしゃべってない。
「涼?どうしたんだ、いきなりだまっぁわぁあ!!」
振り向いて聞こうとしたら俺の胸元に回っていた手が俺の二の腕を掴んで俺の体ごと反転させた。気がついたら、目の前に涼の胸からアゴのラインがきていた。
ちょうど至近距離で向き合ってる状態だ。
「涼?」
涼の行動が理解できない俺は、顔を見上げて首をかしげた。
(残念なことに、涼は俺よりも10cmほど背が高い)
ついに静まり返った教室には、俺と涼の姿だけで他のクラスメイトは足早に部活にいくか帰路についたみたいだ。
水槽の酸素を出す機械だけが、沈黙の流れる教室にコポコポと音を響かせていた。静寂だけに、俺はいやに緊張してた。
なるべくこの状況を早く打破したかった。じゃないと気が持たない。憤死しそうだもん…
「りょ、涼!?どうしたの??」
できれば本当早くしてほしいなぁ…
と淡い望みを浮かべながら、また問いかけてみた。
「……いるの?」
帰ってきた言葉は、聞き取るにはひどく小さい声。俺には届かずただただ教室にとけていった。
「好きな子…いるの?」
俺が聞こえなかったことに気づいたのか涼は今度は、さっきよりもハッキリと声をだした。
それは静かに発せられた質問だった。
「なっ、何言ってんだよ!!涼まで!す、好きな奴な
んて…」
お前だよ!この野郎!って本当は叫びたかった。
でも、この状況でそんなこと間違ってもできるわけもなく俺の台詞は歯切れの悪い終わりかたになってしまった。
涼はというと何時になく真剣な顔つきで、そうでなくても鋭いツリ目はさらに細められ俺はナイフをつきつけられてるような感覚だった。
いったいどうしたんというんだ?
何かマズイことでも言ったかな?
「やっぱりいるんだ…」
黙ってしまった俺に肯定だと読んだのか涼はそういう。眉間に微妙にシワがよった気がしたけど気のせいだろうか…
また沈黙が流れる。涼は難しそうな顔をして何かを悩んでるようだった。
そして、先に口を開いたのは
「悠介…そいつ誰?教えて…」
「は!!?涼まで伊藤と同じこと言うのかよ!?ぜってー言わねぇ!!」
涼だったんだけど。突然伊藤みたいなことを言いはじめる。
「な…親友だろ?教えろよ」
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