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あぁ、つらい辛い…こわい。

漠然と脳裏に浮かんだのは、幼稚で根拠もない単語だった。でも確かに俺は何かに苦しんでたし、何かを求めてた。それの正体は多分もう分かってる。ただ気づきたくなかった。だって、そいつを認めた瞬間、俺の中の人間が死んでしまう気がした。
『淳志…すごくつまらなそう』
ハッとした。頭を何かで殴られたみたいな衝撃だった。由香は、何時もの調子で、また口を開く。
『ねぇ、なんか悩んでるの…?』
由香の気だるげな声は夕方の教室にスッと溶けていった。俺は、あいた右手でシャーペンを握り意味もなく、二回ノックする。俺から、そういう雰囲気にさせたわけじゃない。ただちょっと、断っただけだ。
『…別に……そんなんじゃねぇ…』
そんなんって、どんなんだろう。先程から同じ言葉が頭に渦巻く。あぁ、つらいな…。
『ねぇ、やっぱりアタシじゃだめ?』
由香の表情が少し崩れる。別にこんな顔させたいわけじゃなかった。俺がさっき、無理だと言った時は全然かわらなかったのに。俺はまた、何か間違った事を言っただろうか。分からない。
『淳志…ねぇ、淳志。今の淳志すごいつらそうだよ。』
ああ、由香すごい。そう純粋に思った。由香には俺が分からない事が分かるんだ。由香は人間だ。ちゃんと人が好きだし、ちゃんと心を感じてる。わかんねぇ…そう俺が言ったら、由香はちゃんと人間の反応をするんだ。
『淳志…あたし、やっぱり淳志が好きだよ。だから淳志のそんな顔見れない。』
やっぱり、怖い。俺は分からない。由香が簡単に紡ぐ言葉は俺には、どんな難問より難しく感じた。好意が分からなかった。俺は人を愛せない、それが俺をよりいっそう人間じゃなくさせてる気がした。

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