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お前のためじゃない



「あれ?今日もノートとってくれたの?やっさしー」

もうお馴染みになったこの台詞
視界の先に、ゆらゆらと綺麗に染められた茶髪が揺れる

「お前がやれっていったんだろ」
何時もいつも、遅刻を繰り返す雄二は必ず一限目の授業内容を俺にきく
俺は、毎回律儀にとったノートを見せてる

「ありがとー、健ちゃん」

「ん……」

これは、かかせない習慣
もはや俺の趣味
雄二が笑ってくれるから
だから俺の大事なイベントなのだ

それはバレてはいけない
ずっと大切にして鍵にかけて
見せないでとっておくのだ



午後の日差しは強い
真夏の光が窓ごしにささる
今日も、かわらず雄二にノートを貸して始まった
空が青い


「なぁ、健次何?」
「んー?、あー、……現国」

空気は重く暑い
科目を聞いた途端、隣の席の佐々木は眉をよせた

「あーやーだっ!!あの、オサッンの授業意味わかんねぇだもん!俺寝るわ」

佐々木は机に突っ伏しながらブツブツと文句を唱える
まぁ、言いたいことわかる
確かに意味がわからない授業だから
俺は、青い青い空を見上げ
佐々木同じく寝る計画をたてた




あっという間に放課後
夏の熱は冷めず
照り返す太陽に首筋に汗がつたう
雄二と俺は日陰を探して歩いていた

「健ちゃん、はいこれ英語のノート」

帰り道、雄二は慣れた手つきで鞄からリングノートをとりだす
そして挟まれたルーズリーフを一枚ペラッとコチラによこす
俺は、それを受け取り
ファイルにしまいはじめる
雄二は横目に見ながら、話を続けた

「あのさー健ちゃん、悪ぃんだけど今日の授業の全部見せてくんない?俺全部寝ちった」

「………は?」

「いや、だから全部見せてって……」

そんなのわかりきってる
だけど見せるにも限界がある

「いや……無理」

「何でー」

「ノートとってない……」

俺がそういうと、不服そうな顔がみるみる驚きにかわってく

「うっそ!いつもあんなに完璧なノートなのに!!?てっきり俺健ちゃんは真面目だから全部とってるのかとおもってた」

そんなわけがない
俺だって基本勉強は嫌いだ


「ん?でも一限目は完璧だよな?もしかして俺のため」

「ば、馬鹿そんなんじゃねぇよ」

雄二は何時も一限目は遅刻

「あれ?健ちゃん顔赤いよ?」

したがって雄二は何時も一限目のノートを俺に求める

「そんなことない!!別に、お前のためじゃない!!」

でも、これからは
どうやら一限目以降も必要そうだ

「ありがとー、健ちゃん」

雄二が喜ぶだろうから

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