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満月の8月10日(辰高)
その日は、何の変わり無い夏の日
ただ年に一度の俺の日

『8月10日』

誕生日なんて下らない
俺には興味の無い事だと内心で呟く
朝一番に上がったまた子の声に安眠を妨害されてキレ気味の俺はのそのそと布団から出る

「おはようございまっス!!!晋助様!!誕生日おめでとうございまっス!!」

うぜぇ

誕生日なんて嫌いだ
ただ騒がしいだけ
俺の本当に望んでいる事なんて与えられない

辰馬………

広がる青い空に俺は手をかざして、地上にいるはずの無い人物を思った

あれは何時の頃だろうか

まだ戦時中の………―
その日もやっぱり俺の8月10日
誰にも言わなかった俺の誕生日。

祭りとかの騒ぎ事は好きだったが…どうにもその『誕生日』って騒ぎ事は好きになれなかった
慣れてない優しさが嫌だったからか??

「高杉」

暇をもて余してた「その日」の夜。辰馬が声をかけてきたんだ

「なんだよ?」
「ちょっくら外行かないがか??」

一つの提案
暇だったから
ただ、それだけで辰馬の後を俺は追った

一歩手前を歩く辰馬は何もしゃべらない
俺も何もしゃべらない
会話なんか成立するわけない



あのまま無言でついた先は一本の掛け橋の上

「見てみ…まっことキレイな月じゃの」

彼が急に話だすから驚いたのも反面、見上げた先の満月に目を奪われた

美しく闇に浮かぶ光

「あぁ…キレイだな」

その時は本当にその月が美しくて綺麗見えたんだ
隣でいつになく素直な高杉に目を丸くしていた辰馬だけど、何もその事に言ってはこなかった
変わりに……―

「おめでとうじゃ高杉」
一瞬何を言ってる分からなかったが直ぐに[誕生日]って事に気づく
何で知ってんだ??
とかそんな事どうども良くて、ただ坂本に誕生日を祝われても何の嫌悪感も無いことに自分でビックリした

「今日は特別な日じゃ…高杉晋助の今までの足跡を唯一振り返る事が出来るきに」

あぁ何故この男には何も感じない??

「晋助が生きていてくれて………まっことワシは幸せじゃあ」

そうか、

「……そうかよ」
「そうじゃ」

俺はコイツが好きなんだ
「誕生日おめでとう…晋助」

「ありがとう」

あの頃からの俺の思いは変わってない
当たり前だな…
あの後、何時の間恋仲にまで発展してたから……

そう今日は、俺の8月10日…
俺の過去を振り返る日

アイツはここに来てくれるだろうか??
ガラに似合わない乙女な事を考えている自分に気づき「ハッ」と鼻で笑う
今日も。
あの時と同じ満月だ

「やべぇ……会いたくてしょうがない」

「誰にがか??」

ただの独り言に返答が帰ってきて、驚きに高杉は肩を揺らす

そして、おそるおそる振り返る先には
待ち望んでいた姿

「た、つま……?」

嬉しく口元がつり上がる

「ただいまじゃー」

馬鹿みたいに(実際馬鹿なんだが)笑う辰馬

「んで…ココにいんだよ。」

好きになれなかった8月10日

「愛してるぜよ…晋助」

初めて誕生日が良い日と思えた






「…………俺、も」




おまけ

坂:俺もの前の沈黙長くないがか??

高:気のせいだ忘れろ馬鹿もじゃ

坂:………天よぉ!!!
こやつに隕石ば叩き落として下さ〜い

高:殺す気かよ

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