[携帯モード] [URL送信]
後悔の戦争−弐
その日は朝早くからヅラが部屋へ来た。
入ってきて直ぐに言った
「銀時…大丈夫か?」
この言葉が最初。彼はずっと自分の部屋にいる。
あの後、何回か話しかけられたのを記憶している。
気が乗らず返事を返す事はしなかった

見つめた窓の外に広がる空は、こちらの気も知れずのん気に晴れて。
澄んだ青色は目にしみる。
太陽は自分のこんな顔さえも照らし出す

戦争…―

守れたのは何一つ存在しない。

昨晩の天人の突然の襲撃に自分は動揺して何もできなかった。
高杉の片目から流れる紅の雫に手が震えたんだ…
花が散る様に自分の手から零れ落ちる

自分の無力さに泣きたくなった

「ヅラァ!!金時の様子はどうぜよ?」
背後から辰馬の声が聞こえた。
今は、名前を間違えられた事に対しても何もいう気は無い。
続けて桂のため息混じりの台詞が耳に届く。

何だよコレ?
心配させてばかりじゃねーか…

情けなくて仕方が無い
できるなら死んでいった者達も含め仲間全員に謝りたい。

「銀時!!」

辰馬に名を呼ばれた。
振り返ったら彼の優しさに甘えてしまいそうで。
涙をこぼしてしまいそうで。
振り向けずにいた。
短い沈黙が流れ
「ヅラァ…二人にさせてもらえんか?」
辰馬がその沈黙を破った
何時もとは違う口調。優しいが何処か冷たい。
静かな足音と襖を閉じる音が聞こえた。
桂が出て行ったのだろう…
二人だけになった部屋にまた沈黙が訪れた

「銀時。」
優しく呼ばれた名前
自分だけを呼ぶその声にひどく居心地の良さを感じる
それは、小さな歪んだ愛の様に

「……」
何も答えられない。何を言えばいいのかも分からない
振り向けば見えるはずの彼が愛しくてたまらない
彼は何を思って自分の名を呼んでいる?

「銀時!!」

また名前を呼ばれた。今度は強い口調ではっきりと
その震える声に耐えられず振り向いた
視界に入った辰馬の顔は何処か小さな苛立ちが見えた
何か言おうと思ったが、伸ばされた手に胸倉をつかまれ喉で言葉が詰まる
「いい加減立つぜよ!!これが戦争何だよ!!」
辰馬の頬に涙が伝った

あぁ・そんな顔すんなよ

「諦めろよ!!!」
悲しく響くそれに我慢していた涙が溢れた
「くしょう…!!」
何の力も無い自分に

「ちくしょう……!!!」
腹がたった


辰馬の腕が俺を包む
思うより彼の体は温かかった

[*前へ][次へ#]

2/9ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!