【35/迷子】
ありえねぇ。
小学三年生にして、人生最大の失態だ。
今の俺の状態にタイトルを付けるならば『ライル・ディランディ〜初めての迷子in遊園地〜』だろう。そうに違いない。
俺は周辺を見渡し、人込みの中で絶望的な表情を浮かべる。まだ到着して三十分も経ってねぇぞ。
っつーか双子の兄さんもいねぇ。何あの人? ハプティズムの兄貴達(ちなみに高校生だ)独り占めしてんの? 俺がこんな状態なのに、何であの人だけ楽園にいるんだよ、いい加減にしてくれ。
迷子、というレッテルを貼られることだけは避けたかった。園内放送で『迷子のお知らせです。ライル・ディランディくんのお連れ様、迷子センターでライルくんがお待ちです』なんて流れたら、俺の人生はお先真っ暗だろう。
(兄さん……アレルヤ……ハレルヤ……)
俺は流れそうな涙を我慢するため、鼻をすすってトボトボと歩を進める。
その時、だ。
「――ライルッ!」
「うわっ!?」
俺の身体がぐわっと持ち上げられ、一気に高くなった視界に俺は目を剥いた。
「ハレルヤッ!!」
「ったく、早速はぐれんなよ。探したぜ」
笑みを浮かべるハレルヤに心底安心した俺は、うっ、と声を詰めて我慢していた涙を零す。
「てめっ、何泣いてんだよ!」
「だって迷子センター行かなきゃならねぇかと思って……っんなの、人生レベルの恥だし……っ」
はいはいとか言いながら、ハレルヤは俺を下ろして頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれる。
俺はハレルヤの手をぎゅっと握った――。
『――迷子のお知らせです。ハレルヤ・ハプティズムくんとライル・ディランディくん、お連れ様がお待ちです』
俺とハレルヤは一気に蒼ざめ、脳裏にアレルヤと兄さんを思い描いた。
唯一の救いは、見た目を述べられなかったことだろう。俺は大きな手を必死に掴んで、人生レベルの恥を共にするハレルヤを見上げた。
(090606)
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