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終焉と序章
終焉と序章

(巡り廻る時)




もうすぐこの国は終わる。
鬨の声をあげるキムラスカ軍の手で。
そして終わるのは国だけではない。
俺の命、国民の命、そして、あいつの命。
それだけは避けたかった。けれどもう不可能なところまで来てしまった。このままでは全てがキムラスカに踏みにじられる。だから、俺はお前を。
俺を親友だと言ってくれるお前の気持ちを利用しよう。



「ジェイド。俺だって敵の手にかかって死ぬのはいやだ」



ジェイドの顔が強張る。
俺が何を言いたいのか分かったのだろう。本当に賢いやつだ。厭、俺といる時間が長いからか。



「お 前 の 手 で こ の 国 を 燃 や し  て く れ」



紅い瞳が瞼に隠される。
十分に時間を置いて、再び瞳は世界を写した。



「いやです」



完璧なる拒否。
でも俺は引き下がれない。



「ジェイド」


「いやだ──」



王座から降りて子供のように真摯と見つめるジェイドを抱きしめる。
(温かい。こいつも生きている)
きっとこれが最後。ジェイドを感じられる最後の時だ。



「ジェイド。愛してる」

「ピオニー」



俺の腕から解放されたジェイドの目は決心のみがあった。迷いはない。



「カーティス大佐!突破されます!」



さあ、最後の仕上げだ。キムラスカのやつらに俺の大切なやつの力を見せ付けてやる。



「──やれるな?ジェイド」

「・・・・最後まで卑怯なやつだな!お前は」

「俺らしいだろう?」

「あなたの最後の望みくらい叶えてあげますよ」

「ありがとう。さあ行け」



ここでは詠唱する時間などない。ジェイドが少しでも時間を稼ぐために俺が作った抜け道を通って行くのを見つめながらジェイドと出逢ったときのことを思い出す。
無愛想で、でも妹にだけはちょっと優しかった。
サフィールにはいつもきつくあたっていた。それでもその中には楽しいという気持ちはあった。
とても楽しかった日々。俺が王位など持っていなければ、と何度思ったことか。
でも今はそれをありがたく思える。
あいつとこんなにもかかわりあえた事を。


ピオニーの抜け道を使うのは初めてだったが、もとはサフィールが作ったもの。私が迷うことはない。
一気に駆け抜けて外に出る。
眩しかった。太陽の光だけではなく、国も。何もかもが燃えていた。
さあ、終わらせよう。この国を私の手で。彼の命も。
ありったけの使える火系の譜術を発動させる。私もただでは済まないだろう。下手をすると血中音素の不足により乖離するかもしれない。
でもそんなことはどうでもいい。
彼の最後の命令を果たすまでだ。それまで命が持てば構わない。




燃え盛れ赤き猛威よ
(もう終わらせないといけないんですね)


終わりの安らぎを与えよ
(もっと一緒にいたいなんて過ぎた願い)


全てを灰燼と化せ
(なんて寂しくて、なんて悲しい)


業火よ焔の檻にて焼き尽くせ
(音も色も全てが褪せてゆく)


炎帝の怒りを受けよ吹き荒べ業火
(あなたのいた世界はこんなにも)




す ば ら し か っ た の で す ね





終わりの始まり 始まりの終わり
(訪れるのは終焉かそれとも)




序章なんてものはいらない
楽しかったことがなによりも辛い。出逢った事は後悔しないけれど

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あきゅろす。
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