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モテるあいつをどうにかしてくれ
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瀬戸口蘭は、その容姿から、人にからかわれることはよくあった。幼く、少女のような外見をしていることから、自分より背丈の高い人間にからかわれることが多かった。自分をからかってくる連中には相応に言い返し、その後その人と関わることを止めていったので、周囲に残る人は少なかった。それでも残っていったのは、E組のクラスメイト達だった。

配属当初は、東堂を筆頭に、小柄さなどを馬鹿にされた。そんな成りで何ができる、と東堂に言われた日のことは、今でも覚えている。その頃には既に、長道は瀬戸口に懐いていたので――彼が懐いた理由は、瀬戸口には今でも分からないでいる――、長道が東堂に食ってかかった。瀬戸口はそれを制し、東堂に応えた。その成りでお前には何ができるのか、と。瀬戸口が言い返して来るとは思っていなかったのだろう、東堂は目を瞠り、喧嘩するくらいしか能がないな、と笑った。東堂が何か言って来たのは、この日だけだった。それから、他の者が何か言って来たときに、東堂が制するようになった。

元からいたC組に愛着はなかった。E組に配属された後は、元クラスメイト達に、容姿についてではなくE組について言われるようになった。あんな野蛮なクラスに入るなんて、本当に可哀想だね、僕らなら怖くてすぐに不登校になるよ、と笑いながら言われた。その言い方が、無性に腹が立った。確かに、E組生徒達は喧嘩っ早く、クラスメイト同士でよく殴り合いをしている。また、その様子を他クラスの人間に見られてもいる。他クラスとの合同授業はもちろんのこと、平常の授業ですらまともに受けない。瀬戸口にも何かと食ってかかろうとすることは多い。それでも、瀬戸口に対して、手を上げて来たことはなかった。手を出してきたのは、出会ったときの長道だけだった。

確かに喧嘩っ早い。

だが、何も知らない人間に非常識な集団だと言われるのは許せなかった。

だから、E組を変えてやろうと決意した。

C組は瀬戸口を笑った。E組もまた笑った。東堂と長道ですら、無理だと苦笑した。横山と小浜田だけは笑わなかった。出来る限りやってみろ、フォローはする、と彼らは言った。そのときの彼らはまだ生徒会役員ではなく、一般の生徒だった。そしてその間もなく、彼らは生徒会役員となった。

自分の目的のために生徒会に入った、だがお前のためにもなるだろう、と横山は不敵に笑った。だからお前は自分のやりたいことをしろ、と小浜田は微笑んだ。

瀬戸口は、彼らに助けられたその日から、彼らに憧れを抱いていた。この日、それが確たるものとなった。この人達に着いて行こうと決め、親衛隊を結成した。

親衛隊を結成したはいいものの、小浜田の人気はとても低かった。E組出身であるというレッテルが、小浜田の本来の姿を濁らせているように感じた。E組を奇異な目で見られることも嫌だったが、小浜田という人間を誤解していることが嫌だった。

小浜田は、喧嘩が好きな人間ではない。

長道から瀬戸口を守るために手を出したところは見たが、その他では喧嘩をしているところを見たことがなかった。たまに、上級生のE組に喧嘩を売られていたようだったが、適当にあしらうばかりで、まともに応じてはいなかった。

小浜田は、横山を守っている。

常に横山の後ろに着き、周囲に睨みを利かせて、横山に害が及ばないように守っていた。そのことに気付くのに、時間はかからなかった。

それらのことに気付くまでの間に、瀬戸口は小浜田のことを見続けていた。

見ていたから好きだったのか、好きだったから見ていたのか、今となっては分からない。

確かなのは、瀬戸口が恋情でもって小浜田を想っているということだった。






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あきゅろす。
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