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モテるあいつをどうにかしてくれ
4-4

おれが保健室を出て行ったときと変わらない体勢で、そこに座っていた。保険医は席を外しているらしく、ここにはおれと初春、そして蘭ちゃんの3人しかいない。会計さんも母も既にここにはいなかった。2人共公演を見に行っていたのだろうか。


「どうしてぼくの方を見ないの」


目を逸らしていた先から、はっきりと告げられる。鷹揚な動きで目線を合わせた。

はっきりとした怒気が、蘭ちゃんの目に宿っていた。


「ごめん」

「それは何に対する謝罪なの」

「黙っていて、ごめん」


おれは蘭ちゃんに隠していた。蘭ちゃんが、彼らを慕っていると知りながら、それを言わずにいた。言う出すタイミングが分からなかった、というのは、言い訳だ。


「ぼく、言ったよね。立秋様のことが好きだって。どうしてそのときに、立秋様と仲が良いって――あんなに仲が良いって言ってくれなかったの!? ぼくは、祭で一緒に歩けただけで喜んでた! それだけで嬉しかった! それなのに、あんたはぼくなんかよりもずっと立秋様と近いところにいたんだ!! これじゃあ、ぼくは――ぼくは馬鹿みたいじゃないか!!」

「蘭ちゃん、おれは、」

「馴れ馴れしく呼ばないで! そしてしばらく…ぼくに話しかけないで」


蘭ちゃんの背中が、廊下へと消えて行く。おれは、それを目で追うことしかできなかった。

初春が昔、おれのことを器用な人間だと言っていた。自分だけで何でもできる。だからお前は器用な人間だ、と。だけど、違う。

おれは、何もできない――不器用な人間だ。






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あきゅろす。
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