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モテるあいつをどうにかしてくれ
2-2

しばらくして、迎えのバスが校門前に到着した。豪奢な外見のマイクロバスから出て来たのは、Tシャツの上からパーカーを羽織った、私服姿の会計さんだった。


「はいはーい、お待たせー。みーんな揃ってるー? 中に入ってーどうぞー」


バスから降り、集まっていた人達を中へと入れていく。会計さんはおれの姿を見つけると、こちらに歩み寄って来た。


「やっほー、輝ちゃん。来てくれたんだね―」

「はあ、まあ」

曖昧な返事をする。

何と言えばいいのか分からなかった。会計さんの手がおれの背に回る。ぞわりと背筋が粟立った。背後で、領介、という言葉が聞こえた。


「退けよ」


おれと会計さんに割って入るようにして、長道くんがバスに乗った。続いて、蘭ちゃんもバスへ乗る。そこに便乗して、おれもバスに乗った。バスの中では、蘭ちゃんは長道くんの隣に座ってしまっていたため、その後ろの席に座った。続いて東堂が載って来たが、当たり前のような顔でおれの隣に座った。


「蘭ちゃん、さっきはありがとう」

「何の話?」


ふっ、と鼻で笑うようにして蘭ちゃんは応えた。

親衛隊という立場上、蘭ちゃんは直接、おれと会計さんの間に入ることはできない。そのため、長道くんをけしかけてくれたのだろう。おかげで、あの場から簡単に去ることができた。


「そうやってさり気無い気遣いができるから、俺達も瀬戸口についてってるんだよなー」


なー? と言って、東堂は長道くんの頭を掻き回した。


「やっめろよ!」

「照れちゃってー」


じゃれるようにして東堂と長道くんは遊んでいる。

2人の奥から、所在なさそうな顔でバスに乗り込んでくる渡部くんの姿が見えた。会計さんとどんな会話をしたのか分からない。けれど、決して、楽しそうな顔ではなかった。渡部くんの方へ手招きし、おれの後ろの席に座るように促した。

一番奥の席では、書記役が横たわっており、その隣に庶務役が座ることでたった2人で広い場所を陣取っていた。その前には、黒金くんと会長さんが隣合わせで座り、通路を挟んで副会長さんが座っている。副会長さんの隣は空いていたが、そこに座る勇気は、渡部くんにはないだろう。

渡部くんはおれの姿を見つけると、一瞬迷ったような顔を見せたが、蘭ちゃんの姿も一緒に見つけたからか、すぐ後ろの席に来てくれた。


「来てくれてありがとう、渡部くん」

「別に、お前のためじゃない」


ツンデレっぽい。親衛隊って皆こんな感じの子ばっかりなのだろうか。可愛い。


「はーい、じゃあ皆乗ったかなー? 出発するよー」


バスの出入り口が締められた。会計さんは渡部くんの隣に座り込む。


「よろしくねー、輝ちゃん」


渡部くんの隣ということはおれの斜め後ろの席ということである。渡部くんは呼んだが、会計さんのことを呼んだつもりはなかった。


「輝、いつの間に会計役と仲良くなったんだ?」

「いや、おれも分からないよ、東堂。そもそも仲良くなったとは思えない」

「失礼だな―。仲良しでしょー? オレと輝ちゃん」


おれと会計さんが仲良しだというなら、おれは全校生徒と仲良しと言っても過言でない。


「今回、もっと仲良くなるために、特別企画を用意しましたー!」


じゃーん、という効果音を模した台詞と共に、会計さんが出したのは1枚の紙だった。縦に11本の直線が引かれ、その上には1〜5までの数字が左から順に割り振られていた。それぞれ2つずつ同じ数字が振られ、5のみ3つ並べられていた。


「あみだくじで、今回のお泊りの部屋割りを決めちゃいまーす」

「ええぇえええええ!?」


自分の希望の相手と同じ部屋になることはできない。それが分かって、一番反応していたのは黒金くんだった。果たして、誰と同じ部屋を狙っていたのか。余り考えたくはなかった。







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あきゅろす。
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