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モテるあいつをどうにかしてくれ
4-1

おれに何かできるとは思えないけれど、蘭ちゃんのために頑張れというならやぶさかではない。

しかし、生徒会役員とはこれ以上関わり合いになりたくはない。またね、と言っていたが、また来るつもりなのだろうか。

蘭ちゃん達と昼食を摂った後、自教室に戻ったが、そんな気配はなかった。会計役は来なかったが、代わりに会計役の親衛隊長――渡部三也(わたべ・みつや)が来た。


「お前が鈴木輝だったのか」


親衛隊の割りには珍しく、おれと同程度の身長である。ふわふわの髪は茶色いが、染めているのではないのだろう。自然は色合いだ。ふわふわの髪は蘭ちゃんを思わせる。しかし端正な顔立ちは歪められ、今にも殴りかかりそうなのを無理やり抑えているようにも見えた。忌々しげに噛み締められた口からは八重歯が除いている。八重歯は可愛いね。

時計を確認すると、始業までまだ時間がある。


「うん、そうだよ。どうしたの? 渡部くん」


接触禁止令を破ってまで来たのだ。重要な用事があるのだろう。大体予想はつくけれど。


「俺の名前を知っているのか」

「まぁね。親衛隊のトップ陣の名前くらいは把握しているよ」

「そうか。一つ聞きたい。裕太様とは、どういう関係なんだ」


さすが、親衛隊長。耳が早い。いや、この場合、会計さんが吹聴しているのか。彼の目的を考えると、ありそうなことだった。


「どうもこうもないよ。今朝、急におれのところに会計さんがきた。それだけだよ」

「何故、お前のところへ行くんだ」

「……黒金くんと会計さんの会話を聞いちゃったからかな」

「黒金……!」


歯ぎしりしながら、自分の両腕を抑える渡部くん。どうやら、怒りはまだ、なくなった訳ではないようだ。それがおれに向かうか、蘭ちゃんに向かうか、おれに向かうかで決めかねているのだろう。おれだってとばっちりは御免被りたい。


「会計さんがおれのところに来たのは簡単な話だよ。おれを当て馬にしたかった。それだけだ。誰でも良かったんだよ。あれはあれで、会計さんにも目的があるんだよ」

「目的?」

「見てれば分かるよ」


丁度よく始業のチャイムが鳴ったので、話を無理やりそこで切り、教室に戻った。渡部くんは何か言おうとしていたが、大人しく教室へ戻ってくれた。

詳しく説明するつもりはなかった。見ていれば分かることだ。要するに、おれを出汁にして黒金から嫉妬してもらおうという魂胆のことだ。しかし、今ここで言ってしまっては渡部くんは怒って黒金くんのところへ殴り込みに言ってしまいそうだった。あのときにおれに殴りかかろうとしたことからも、血の気が多いことはよく分かる。ここで、渡部くんが手を出したとして、それを皮切りに、親衛隊の者達が動き始めたらたまらない。彼らには大人しくしていてもらわなければならないのだ。そうでなければ、また蘭ちゃんが無茶をする。

教室に戻り、教科書を出し、授業を受ける予定だった。


「輝ちゃん、いるよねー?」


今朝と似たような展開だった。




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あきゅろす。
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