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モテるあいつをどうにかしてくれ
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私がそのときに任されたのは、理事長室までの案内でした。そのはずだったんですが、生徒会室までの案内まで理事長から頼まれてしまいました。生徒会室には、横山さんと小浜田さんの2名しかいませんでした。どちらかにその後の校舎と寮の案内をお任せしたかったのですが、拒否されてしまい、結局私がすることになりました。


あの頃は、どう考えても、まだ多忙な時期ではありませんでした。だから、あの2人にも仕事を新たに受け持つ余裕はあったと判断しまいた。ですが断られてしまいました。横山さんは、それが筋だから、と言って断ったのです。筋とは何でしょう。筋書でも決まっていたというのですか。どんな筋書きですか。わたしが振り回される筋書きですか。副会長とは、本来、新入生の案内係ではなかったはずです。


校舎内をざっと案内した後、寮の案内をしました。彼は、理事長から、一人部屋を充てられていました。本来、生徒会役員でなければ得られないほどの特別待遇です。荷物をまとめると、食堂の案内へ行きました。そこで名智と黒金さんが出会ったのです。何故でしょうか。未だに分からないのですが、名智が彼のことをいたく気に入ってしまったのです。


何が良かったのか、分かりません。ですが、その日から、食事の際は生徒会役員席の方へ必ず黒金さんを呼ぶようになったのです。ええ、初めに彼を生徒会役員席へ呼んでしまったのは私です。周囲の喧騒からそうした方が良いと判断してしまったからです。ですが、それは間違いでした。彼を特別扱いなどするべきではなかったのです。彼は、当たり前のような顔で、特別扱いを受け入れてしまうのです。――いっそ腹立たしいほどに。


…あの、名智と黒金さんの出会いから、名智は会長としての職務を放棄し、黒金さんと遊び呆けるようになりました。黒金さんは逃げていたようですが、あれは、追いかけっこを楽しむ少年のようにしか見えませんでした。そしてわたしは、会長職を全うさせようと――名智を追い始めたのです。


それが間違いであったとは、あのときは気付けませんでした。先月、小浜田さんが怒っているところを見て初めて気付いたのです。――おや? 小浜田さんのことをご存じでしたか。そうですよね、生徒会役員ですものね。彼は噂通り、余り喋る人でも、感情を露わにする人ではありません。私も、あのときに初めてあのように雄弁に語り、激怒する小浜田さんを見ました。彼は言ったのです。やるべきことをやってから会長を追えと、そのような内容でした。私は、愚かにもそのときやっと知ったのです。良かれと思っていた行動が、皆に迷惑をかけていたことを。私が名智を追っていた頃、誰かがそのときやるべき仕事を肩代わりしていたことを知りました。


運動神経のいい名智に、私は追いつくことができませんでした。体育の成績はあまり芳しくない私には、元々無理な所業だったのです。そして、私は副会長として、会長を追っていたはずなのに、実質的に私は――私は副会長としての職務を放棄していたことと同じことをしていたのです。会長である名智は、未だに自分の仕事を認めていない節があります。ですが、同じような職務を務めている小浜田さんもまた、納得した上ではないようなのです。思えば、彼らの生徒会抜擢の話は、私達よりもかなり急な話でした。全て承知の上でのことではなかったのでしょう。それでも彼は、私達以上に仕事をしているのです。それが、悔しくて――辛い。






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