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モテるあいつをどうにかしてくれ
1-1

体育祭が終わった7月に待っているのは、夏休みだけではない。夏休みに入るにはまず、期末テストという苦行に耐えねばならない。


「それももう終わったんだよね」

「だから、いきなり何言ってんの、輝」


D組の教室を開けてすぐのところに立っていた東堂に突っ込みを入れられる。東堂がもう来ていそうな雰囲気があったから言ってみたのだけれど。

今回、おれがいる場所はまだE組ではない。D組――つまり、おれのクラスの教室を出てすぐのところに東堂が来ているのだ。出迎えだった。

体育祭が終わるまでの間、蘭ちゃんの身の安全の確保のため、おれと蘭ちゃん、長道くん、そして東堂の4人で帰寮していたのだが、それが何故か今も続いている。どちらか先に終わった方がもう一方のクラスへ迎えに行くという習慣になっていたのだが、大抵東堂がおれを迎えに来ている。いや、大抵ではない。体育祭以降の帰寮時は、常に東堂が迎えに来ている。


「東堂って、何でいつも迎えに来るの? もう、蘭ちゃんにくっついて来なくてもいいんだよ?」


あの後、生徒会から――生徒会と言う名の横山から――あのときの関わっていた親衛隊達に、おれと蘭ちゃんに接触しないように通達がなされた。蘭ちゃんに関しては、蘭ちゃん自身が親衛隊であるため、全くの接触を禁じることは不可能であった。そのため、制裁を禁じるという名目で命令が下されていた。これは、正式に出された命令であり、違反した場合は停学処分とする、というお言葉付きだった。しっかり、彼らの署名入りで文書にも残されているらしい。

おれに下された命令は全くの非公式なので、違反しても罰則はないのだけれど。


「放って置いたら、輝は一人で何処かに行くだろ?」


何でバレてるの。一人でいたら、そりゃ萌えの補給に出かけます。

平凡の中の平凡というこの容姿のおかげか、周囲に溶け込むのがかなり上手いと自負している。この、影の薄さを利用し、放課後は萌えの捜索と供給に出かける。

最近では、黒金くんの観察に費やしていた。

周囲の人間に危険が及ばない範囲であれば、黒金くんには全力で王道総受けして頂きたい。しかし、体育祭で露見したように、このままでは、生徒会がまともに機能しない。今は、おれの説教の効果があったのかどうか分からないが、あの場にいた親衛隊員は、仕事を手伝うようになったらしい。そして、こちらは誰に説教されたのかは分からないが、副会長さんが生徒会の仕事に復帰するようになったそうだ。これで、黒金くんをいまも尚、追っているのは、会長さんと会計さんの2名のみとなっている。

あれ。おれ、何もしてないけど、既に、総受けの枠からはみ出し始めていないか。これだとただの会長×黒金←会計じゃないか。

これならおれ自身は何もしないで、そのまま見ていればいいんじゃないだろうか。

おれや蘭ちゃんといった、周囲の人間を関わり合いにさせることなく、生徒会役員に仕事をさせることができれば、王道総受けを阻止しなくてもいんじゃないだろうか。


「ねぇ、東堂。生徒会に関わらずに生徒会に仕事をさせるってどうしたらいいと思う?」

「無理じゃね」

一蹴だった。

ですよね。

取り敢えずの目的地であるE組はすぐ隣である。その教室のドアを開ける前に、ふと、A組の教室の方を見てみた。渦中の黒金くんは、果たして今をどう過ごしているのだろうか、という思いからだったが――、

どん、

と、肩がぶつかった。


「すみません…」


謝って来たのは、噂の黒金くんではなく、顔を真っ青にした副会長さんだった。

すごく、苦労を背負った顔をしている。思いつめた顔と言ってもいい。


「どうした? 入らないのか?」


東堂が聞いて来る。

さて。

生徒会に関わるとろくなことはない。可能な限り関わらない。それに越したことはない。

しかし、あんな状態になってしまっている人間を見過ごしてしまうのも、人としてどうなのだろう。





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