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モテるあいつをどうにかしてくれ
1-5
長道くんのいた売場から離れ、レジで会計をしている間に、先ほどのやりとりからずっと気になっていたことを蘭ちゃんに訊ねてみた。


「蘭ちゃん、もしかして、気付いてる? 長道くんのこと」


気付いていないのであれば、蘭ちゃんにしては珍しい応対なのだ。友人からの誘いを、無下に断り続けているところから違和感がある。長道くんがその違和感に気付いていたのかどうかはわからないが、余りにも不自然であった。

案の定、蘭ちゃんは溜息を吐くと、


「―――あれだけ分かり易くて、気付かないはずがないでしょ」


と呆れたように呟いた。


「ぼくは領介の想いに応えることはできない。それなら、変に期待を持たせるようなことはしない方がいいんだよ」


だから領介からの誘いは断り続けなくちゃいけない、と続ける。

蘭ちゃんの決意は固いようだ。やはり、このままでは長道くんの想いが成就する日は遠いようだ。だからといっておれがなにか横やりを入れるつもりはない。おれはあくまで傍観するだけの脇役だ。アニメであれば主役の脇の脇にいるモブ、小説であれば名前すら出て来ない脇役だ。横で見て、自然の成り行きに萌えて行くのが一番良い。長道くんの想いは熱いようだし、放って置いても何がしかの動きがあるだろうことは期待できる。長道くんがまず、蘭ちゃんの決意に気付かなければ、進展はないだろうけれど。

それにしても、だ。

蘭ちゃんのこの固い決意はどこからくるのだろう。

ふと1つの可能性に思い当たった。


「もしかして蘭ちゃん、誰か好きな人がいるの?」


それならば、他の人からの想いに応えようとしないのにも頷ける。

しかし、蘭ちゃんはこちらをちらりと一瞥しただけで、再び前に向き直ってしまう。


「ぼくは、生徒会書記親衛隊隊長だ。それだけだよ」


他に慕う人間なんかいない。

そう言っているような、凛とした態度だった。だが、はっきりと口に出して述べた訳でもない。おれの質問には否定も、肯定もしなかった。その返答と態度自体が、答えになっているような気がする。

慕っているのは生徒会書記。想っているのは別の人。

そしてそれを言うつもりは毛頭ない。

真剣な表情だった。

流石のおれも、萌えだなんだかんだと茶化す気にはなれなかった。




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あきゅろす。
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