2 「こうなりゃ自棄だ!呑め!野郎共ーーッ!!!」 「「「おーーっ!!」」」 元親の合図で、宴会は始まった。 鍋を囲っていた六人は魚を鍋に注ぎ込み、長曾我部軍の男達は乾杯し合い、座敷中が騒がしくなる。 「政宗、野菜は持って来ただろうな?」 「of course,小十郎の特製だ。美味ぇぜこりゃあ。」 「マジか!?俺小十郎さんの野菜好きなんだよな〜。」 はしゃぐ慶次の目の前で、野菜も鍋に放り込まれる。 それが煮えるのを待つこともなく、その周りでは呑んで歌えの大騒ぎが繰り広げるられていた。 ちなみに、その、と言うのは、座敷の中心で鍋を囲む六人のことである。 慶次は一緒に騒ぎたいのか、どこかウズウズしていたが。 「こりゃ年末のうちといい勝負だね……。」 「なんだ?虎のおっさんのとこでも宴会やるのか?」 「それもあるけど、うちの場合殴り愛がはじまるからさ、これがまた愃ましいのなんのって。」 「そんなことはないぞ佐助!そこまで言うのならばお主も全力でぶつかってみればよいのだ。さすれば」 「それできるのなんて幸村くらいだって;」 「だろー?」 「慶次殿ぉお〜〜ッ!!;」 ((同感だな……)) 無念と言わんばかりに喚きだす幸村を横目に見ながら、眼帯二人組は武田軍のようすを思い浮かべてため息をつく。 濃い軍隊だと思ったようだが、二人とも、自分の軍が十二分に濃いことには気づいていない。 佐助は幸村をなだめ、慶次は苦笑いを浮かべながらそれを見つめていた。 そんな中、 「慶次……酌をせよ。」 「珍しいね、元就が飲むなんて。」 「そうでもしなければこの騒がしさについてゆけぬ。」 さりげなく、しかしちゃっかりっ慶次の横に陣取っていた元就が、慶次に向かって猪口を差し出す。 しかし、それを他の面々が黙って見ているわけもなく、 「Oh, 毛利…随分と調子がいいじゃねぇか。」 「フン……」 「自分だけ楽しもうとするたぁ頂けねぇな……慶次!俺もだ!!」 「ハイハ」 「慶ちゃん、俺様も頼むよ?」 「え……」 「テメェ猿……what a nerve!慶次、俺が先だ!」 「ちょっ、」 「けっ、慶次殿ッ!某もお頼み申す!!」 いつの間にか、慶次の目の前には五つの猪口が一斉に差し出され、酒が注がれるのを待ちわびている。 さすがの慶次も、これには少したじろいだ。 「ちょっと待てよ;阿修羅じゃないんだから一遍には無理だって!;」 どう足掻こうと、人間の腕は二本なのである。 「だそうだ……下がれ、愚民共。」 「おっと、そう簡単にゃあ引き下がれねぇな。だいたいこの宴を催したのは俺達だぜ?」 「That right. 俺達が先に頂くのが筋ってもんだろ。」 「しかし、下衆徒はもてなすものだと政宗殿が以前おっしゃって!」 「旦那、ゲストね、ゲスト。」 「あ゙ーもうっ!!拉致あかないだろ!?言い出したやつから順番!な!?」 いよいよ怒鳴りだした慶次に、五人は大人しく頷いた。 鍋の具は既に、煮えつつあった。 _ [*前へ][次へ#] |