1 四国・長曾我部の本拠地である屋敷は、いつにもまして騒がしくなりつつあった。 敵襲……と言うわけではなさそうだ。 めまぐるしく動き回る男達の手に抱えられているのは、酒樽やら、飯桶やら、魚やら。 どうやら、宴会でもやるらしい。 「アニキ、この鍋は何処に置きやしょうか?」 「オウ!真ん中に頼むぜ。」 この家の主・長曾我部元親も、楽しそうに自ら事の指揮を執っていた。 年の瀬ということで、鍋でもつつくようだ。 「にしても、アイツら遅ぇな……」 ふと、眼下にある城門に目をやる。 どうやら、宴をするにはまだ誰か、人が足りないらしい。 振り返るように宴会場を見れば、鍋の横には捌かれた魚が大量に置かれていたが、他の材料はない。 「政宗の奴、何モタモタしてんだ?………お。」 ふと、城門に人影が見える。 余程待ち詫びていたのか、元親は窓に駆け寄ると、その姿を確認した。 それに気付いたのか、門を通って入ってきた二人が、顔を上げる。 その内の一人が軽く手をふれば、元親はそのまま、城から飛び下りて二人の目の前に着地した。 「よォ、遅かったな。」 「sorry,道中色々あってな……。」 「久しぶりだな、元親。元気にしてたかい?」 「あぁ、オメェさんも元気そうだな。」 手を振ってきた彼、慶次の言葉に、元親は笑って答えてみせた。 その横では、何故か政宗がやけにげんなりとしている。 「keep one's promise. ちゃんと連れてきたぜ。」 「おう、それはいいんだが……何でそんなやつれてんだ?;」 疲れを全面にだし、物鬱気にため息をつく政宗に、元親は不審感を覚えた。 元々、今日の宴は政宗が発案し、元親と協力して準備したもので、政宗もそれを楽しみにしていた。 だからこそ、慶次を探すという役目を買って出たのだ。 それなのに、政宗の気は、昂ぶるどころか沈みきってしまっている感じがする。 しばらく首を傾げて政宗を凝視していた元親の肩を、慶次がトンと叩いた。 「ごめん;あれ、俺のせい。」 「?」 更に頭上に疑問符を浮かべる元親に、慶次はもう一方の手で後ろを示した。 「!?;」 「連れてけって聞かなくてさ。俺は別によかったんだけど、政宗が拗ねちまって」 「Don't tell a lie!! 拗ねてねぇ!」 「拗ねてたよあれは、ねぇ旦那。」 「政宗殿元親殿!抜け駆けとは卑怯なり!!」 「……途中で会ってからずっとこんな感じでさ〜…。」 「…………………。」 慶次の示した先には、赤と迷彩。……真田幸村と猿飛佐助が、どこか黒いオーラを纏って仁王立ちしていた。 さらに、 「それから、せっかくだから元就も呼んできた。」 「フン………。」 元親と政宗の心情は、見事なまでに合致した。 _ [次へ#] |