最後に送る幸福な唄(佐→か前提佐+幸/切)
川中島の決戦での勝利の後、武田軍はしばしの休息を味わっていた。
先の戦で功績を上げた真田幸村も、何故か今日は鍛練もせずただ上田城の屋根上で寝転がり、空を見上げていた。
主の珍しく大人しい様子を不思議に思いながら、佐助は何を思ってか浮かない顔をしてそれを見つめていた。
いつものように雄叫びを上げるでもない。
団子を食べようと誘うでもない。
黙っている幸村の隣というのは妙に居心地が悪くて、佐助は二、三歩引いたところに立っていた。
無論、隠れているわけではないのだから幸村とて佐助がいることに気付いているはず。
それでもその遠くを、しかし真直ぐと見据える目が佐助に向くことはない。
普段は熱血で、物思いに耽るなんて性に合わないように見えるのに、その様子はどこか様になっていて、声をかける気にはなれない。
それでなくても、佐助は今とても、複雑な心境下にいるのだ。
勤めを果たしたというのに、脳裏に浮かぶのは罪悪感と、想い人の忍らしくない泣き顔。
今まで嫌な仕事は山程してきたが、ここまで苦々しい思いをしたのは初めてだった。
「………佐助。」
「ん?」
「いい天気でござるな……。」
「……うん。…そうだね………」
言われて初めて、佐助は空を見上げた。
その碧は何処までも広がり、散ったように浮かぶ雲がどれほど小さいかを物語る。
思い出されるのは、戦の日のあの空だった。
「………上杉殿は、お館様との巡り合わせは前世よりの運命と申されていた…。」
声を出すわけでもなく、佐助は頷く。
知っていた。彼だって、ちょうどその場に居合わせていたのだから………かすがと共に。
上杉謙信は、潔い死に様だった。
「それがどうかしたのかい?」
「………誠、だと…佐助は思うか?」
上半身をゆっくりと起こし、幸村は振り返り尋ねる。
それは最も単純なことで、しかし答えきれないのが事実だった。
生き死にの真実など、誰も知りはしない。
世界が本当に輪廻しているかさえ、誰にも分からないのに、念仏を唱えれば極楽へ行けるだとか、殺生をしなければ神が救ってくれるだとか勝手に思い込み信仰するのは、佐助から見れば馬鹿げた考えだ。
しかし、あの二人の戦いを見守ってきた佐助は、その言葉が誠か否かなど答えることはできず、ただ苦笑いを浮かべるのみであった。
その様子を見て、幸村は笑った。
「某には、それは誠に思えるのだ。」
「……なんで?」
「…………………
分からぬ!」
「はぁ?;」
あまりにもハッキリと、しかも笑顔で答えられ、佐助は思わずずっこけそうになりながら素っ頓狂な声を出した。
さっきまでの真面目な雰囲気なぞ何処吹く風。
心外だといわんばかりに幸村は立ち上がり、佐助の方を向いた。
「佐助はそうは思わぬのか!?」
「べっ、別にそういうわけじゃないって。怒んないでよ;」
ブンブンと首を横に振れば、幸村は納得したようにまた大人しくなって、今度は苦笑した。
「理由などない。……ただ、巡り合わさる運命を持つ者だからこそ、お二方が宿敵なのだ。」
「……………」
幸村の瞳は濁りなく透き通り、その真摯さをそのまま宿していた。
一迅、弱めの風が吹く。
北から吹くその風に佐助の頭には主の宿敵が浮かび上がった。
「某には、そのように思えるのだ………佐助、お前は違うか?」
答えられるわけがない。
そう思いはするのに、佐助は無意識のうちに首を縦に振っていた。
「お館様と出会ったことを、某は運命のように感じたことがある……政宗殿も然り。」
だからそう思うのかもしれないと笑う幸村の言葉を、佐助は馬鹿げた考えだとは思わなかった。
「……俺様も、その意見には賛成。」
安っぽい信仰とそれは全く違う。
祈りではなく誓いのようなその言葉に、佐助はまた縦に首を振る。
主だから信じられるというわけではないが、信じたくなった。
運命の巡り合わせを、
最後に送る幸福な唄
癪なのでかすがに話してやる気はないが、
恋敵であるはずの謙信と、かすがの巡り合わせを、望まずにはいられなかった。
泣き顔を見るのが辛いと、初めて思ったから。
END
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佐助は切ないなーって話。
今日佐助で春日山行ったら
「あいつがいるところか……やりずらいな」
「今度一緒に、里帰りしない?…なんてね。」
とか言っちまいやがりまして……あ゙ー、やっぱ佐助好きだー!!でも慶次はもっと好きだー!!(要らぬ主張)
佐助→かすが はまりかけです。あくまで→前提で。(一護と織姫も同じ/ぇ)
あ……BLEACH最近書いてないなぁ…
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