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優しい夢を見ていたような気がする。


優しい夢を見ていたような気がする。
悲しい夢を見ていたような気がする。
こわい夢を見ていたような気がする。
苦しい夢を見ていたような気がする。

お母さんもいてお父さんもいて、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、妹たちも笑顔で笑っていたあの頃の夢を見ていたような気がする。
そうだ、こう戦士を始めたのはお母さんが亡くなってからだ。

「おかあさん!おかあさん!」

幼い私。たしか、小学校の卒業式も目前とした時期だった。交通事故で母さんを亡くした。そう、私のせい。私の中学の制服を取りに行くために車をだしていたんだもの、自分で取りに行っていれば事故にならずに済んだのに。その時既に、お姉ちゃんもお兄ちゃんも社会人で、妹たちはまだ小学生だ、火の扱いをさせるのは気の毒だ。

「だから、私しかいなかったんだ」
「不和さん。今日どう?」
「ごめんなさい、今日は…」

そう、断るしかないんだ。妹は幼すぎる。だから、私しかいないんだ。そうやって、毎日をすごしていくんだ。すこし、風の噂で聞いた。自分の付き合いの悪さからクラスの中で村八分にしようとする。勝手にすればいいじゃない。馬鹿らしい。子供らしい感情なんて持ち合わせていなかったのは、なんて複雑な感情が渦巻いている。昔からそうだった。お姉ちゃんやお兄ちゃんはこの家が嫌いだったから、私が面倒を見ていたし、お父さんは、警察官なので、あんまり返ってこないから、お母さんの手伝いばかりだった。「だから、同じくらいの子とは付き合いにくかったのかもね。」なんていうのが、結論だった。それで、すべてを片付けていた。たくさん考えて、たくさん真剣に向き合っていかなきゃいけなかったんだもの。仕方ないと割り切っていた。自分が居た。お母さんが死んだのは自分のせいだ、と思っているからだ。そして、そんな日が来た。私の中の日常を百八十度変えてしまう人生の転換。妖魔だった。
私の前に現れて、妹たちに牙をむいた。ひっつかんで投げ飛ばして妹たちに逃げさせた。それからは無我夢中で戦っていた、無我夢中でサンセットライダーを呼び出して、私は戦っていたのだ。それから、ふいに嫌な予感がして町に繰り出せば妖魔だったりなんだりと出会っている。何回も断っていれば、誘われなくなって、気がつけば、本格的ないじめが始まるのだ。女の世界は怖くて表に出ない。肉体的には来ない、精神的に来るのだ。
戦うことでさえ放棄したかったが、この前世の記憶のせいだ。誰を守っているのかは理解できなかったが、孤独に生きた戦士の一生を見たのだ。彼女が何かを守りたい、という思いに連れられて私は戦っていた。だから、私は戦えた。だから、私は生きている。誰かに依存するように。セーラー戦士に依存するように、縋る様に生きている。

「沈黙が呼んでいる」

不意に声が聞こえた。闇が呼んでいるような居心地のいいような、浮遊感に襲われて、ただ静かにその闇に身を任せる。
あら。カオリナイトが使わない部屋の中に入ってそう、漏らしたのだ。床に倒れる女。不和はじめと、その純粋な心を。
あの小娘と、この心をつかいましょうか。きっと、沈黙のメシアを呼び起こすのに買って出てくれるでしょう。にやりと笑って、窓の外を見る。桃色の髪の少女が建物の中に入っていくのを見た。さぁ、楽しいことになるわ。くすくすくすくす。カオリナイトの口が弧を描いて高笑いを放つ。




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