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(死帳)091124


月→←L


ふ、としたときに竜崎の癖を見つけた。それは些細なことすぎて当の本人も気づいてないだろう。
「竜崎、今寂しいの?」
「…はい?」
変わらない表情で不思議なものを見るような目で見つめられる。途端ふわふわと心臓が浮いて、いきなりおとされたような衝撃がはしった。まただ、竜崎と目が合うたびにいつもこうなって目を逸らしてしまう。
「前に、寂しいって言っていたときの仕草に似てたから。違ったなら悪いけど」
「どんな仕草してましたか」
「え」
「そんなこと言われたら気になります」
黒い目が僕を射抜く。せっかく逸らした視線が、より熱く吸い込まれる。
「…いつもより少しだけ、首をもたげるんだ。」
本人すら気付かないだろう仕草を知ってしまった。僕は鈍感ではないから自分が何故竜崎を目で追っていて、細かなことに気付いてしまうのかわかっている。この心臓の叫びも、すべてはそのせいだと知っている。(だけど僕はそれを男同士で想う行為ではないことと、竜崎がLだという事実に信じたくない気持があって気付かぬふりをしていた。後ろめたいのだ、これは恋なんかじゃないと誰かに言ってほしいのだ)
「よく気づきましたね」
「寂しいの?」
「はい、とても。…どうしてあなたがキラなんだろうって思うと、寂しいというより 悲しいです」
ふい、と顔を逸らされてしまった。というより体ごと横をむいてモニターを見つめている。その横顔があまりにも悲痛を訴えていて、僕が悲しくなった。ズキズキと痛む胸を押さえるしかない自分が馬鹿に見える。認めたくない。認めてしまったら、もう戻れない。(ごめん竜崎、お前がLでも僕はキラでいるしかないんだ。)すきだと声にだしてしまえば、いつくか楽になるだろうか。それとも僕に思わせぶりな態度をとっているのも、竜崎は頭がいいから僕が竜崎がすきだと気付いていての演技なのだろうか。(それなら寂しいなんてセリフを吐いたあとに眉を潜めるだろうか。耳を赤くするだろうか。奴は僕がすきなんじゃないか。ああ もう いやだ)
「僕はキラじゃないって何回いわせるんだ」
はは。と笑いまじりに答えたら、竜崎は視線を僕に寄越すことなく「そうですね」と答えた。ああ、皮肉なことに僕がキラじゃなかったら竜崎に出会うことはなかった。なのに今僕がキラであることがこんなに難関だなんて。竜崎に出会ってから、僕はおかしくなる一方だ。
「でも、もし僕がキラだったら竜崎以上に悲しいと思うよ」
ガタン、と驚いたように立ち上がる竜崎のほうを見てクスクスと笑ってやると、信じられないといったような表情を向けてくる。
「どういうことですか」
「もし、って言ったからね。僕はキラじゃない前提で言ってるよ」
「わかってます。」
本当にわかっているのだろうか。今からいう言葉を竜崎はどうとるだろうか。捜査の一貫として終えるのか、唖然とするのか。僕は、無理矢理竜崎を押し倒したりしないだろうか。
「だって、好きなひとが自分のことを疑っているんだ」
「…ライトくん、」
「自分は好きで仕方ないのに、でも相手は天才探偵だなんて命がけだよね」
「それは、私は、どう返せばいいんですか」
困惑したように言葉が絡まる。僕の吐き出すわけのわからない言葉に竜崎は手探りで僕の真意を暴こうとしている。冷や汗が、吹き出た。

「好きなんだ。竜崎が」

なにが、楽になるかも。だ。
頭がぐわんぐわんする。言うんじゃなかった、言うんじゃなかった。自分で感情を認めてしまったら最後だとわかっていただろう。僕は、馬鹿 だ。
「嘘が上手なあなたらしくない。」
「嘘ならもっと上手く演技してるよ」
「…嘘、だと 言って下さいよ」
そんな懇願するような目でみないで。僕だって自分が言った言葉に混乱しているんだから。
嘘ならどれほどよかっただろう。演技ならどれほどよかっただろう。そもそも竜崎が耳を赤らめたりしなければ僕はこんなに苦しくなる告白なんてしなかったのに。自分で認めたり、しなかった のに。
「すき。嘘じゃないよ」
あ ああ、僕の余裕のない表情は、彼の目にどう写っているのかな。僕、竜崎のもうひとつの癖を見つけてたんだ。言ったら多分怒るから言わなかったんだけど、照れたら手を首の後ろにもっていくよな。なあ、期待させないで。今そんな仕草しないで。耳を赤らめないで。僕を勘違いさせないで。

なあ竜崎、僕がすきだろう?
「…私は、」
唇が、動いたその瞬間に壁に竜崎を押し付ける。驚いた。思っていたより細くてしっかりしている。
告白なんて今まで何度もしてきたのに、どうしてこんなに僕は必死なんだ。真剣、なんだ。
なあ竜崎、僕がすきだろう
僕がすきだろう、僕がすきだろう。頼むよ、

「すきだと言ってくれ」


異常







あきゅろす。
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