[通常モード] [URL送信]
(雄吉)100119



可愛さなんて欠片もない、ましてや上司。無意識に向いていた俺の視線を絡めるように目が合う。(あ、)反応を示すまえに忙しさからか、ふい と顔を逸らされた。この瞬間が嫌いで嫌いで仕方ない俺はがくんと項垂れる。
男だぞ?上司だぞ?本当にあの人に抱いている感情は恋か?憧れじゃないのか?何度も自問自答を繰り返した。そのたびに自分は「あの人が特別だ」と言い張る。
なにがいいの?…さあ。
どこがいいの?……さあ。
だから曖昧なのかっていわれたら違う。確実に特別、はっきりしている。ただ、(いや、恋だけど。あの人やっぱり上司だし。男だし。それは承知だ、100も200も300も承知!だけどきっと絶対報われないし、ありえない。わかってるけど…!)
あの気だるさが混じった目に、俺を映しているときがあると思うと…なんだろう、わけわかんないほどぐるぐるする。
「…おい、雄二郎」
「え!あ、すみません」
びっくりした。今思いを馳せていた人が目の前にいる。少し長いその髪に触れたい。男、上司、それ以外に困難は山ほどあるけど、ストップをかける頭とは別に手がのびる。手が…髪に触れようとして肩に落ちた。
「…なんで目、そらすんですか」
「は?」
「そのくせに、話しかけてくるなんて」
俺は何を言ってるのだろうか。吉田さんが困ってる。不思議なものを見たような顔をしている。ああもう、困らせることわかってて理不尽な言葉をふっかけてしまった。普段から皺をよせている眉間が、普段より深く刻みこまれている。もう、どうしよう、
「何を言ってるんだ、雄二郎」
当たり前の反応に当たり前に呼ばれる名前。それだけで苦しい。
「 すみません、忘れて下さい」
手が肩から滑りおちるように俺のもとへ帰ってくる。どうしよう、手に吉田さんの肩の感覚が残って心臓がやかましい。
「取りあえず、編集長が呼んでるぞ」
「あ、はい。わかりました」
「……あんまり追い詰めるなよ」
そんな優しい言葉をかけておいてさっさとどっか行ってしまうなんて薄情なひとだな。
なにを迷えばいいのかわからないほど、あなたが好きです。どうしてくれるんですか

不親切なひと







あきゅろす。
無料HPエムペ!