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(夏古)100208


俺以外の人と、しあわせになって下さい。と、きらきら光る彼は淡々とした口調で哀しげな表情を浮かべることもなく言ってきた。そうだな、その目をみたら今の心情を写すこともなく「無心」
かなしいなあ、どうしてそんなこと言うの?と、どろどろ腐る俺は平然とした口調ですがるような表情を浮かべることもなく言っていた。そうだな、俺の目をみたら心情がよく写るよ「余裕」


俺、結構古市くんのこと好きなのに。と、ひとつも嘘偽りのないことを全て嘘偽りで出来た表情で声に出す。表情と言葉が合っていない、これは胡散臭いなあ、なんて頭の片隅で考える余裕がある。俺はお別れが悲しくないようだ。「薄情」
うれしい、俺も夏目さんすきですよ。と、全て嘘偽りで出来たことをひとつも嘘偽りでない表情で彼は声に出す。表情と言葉が合っていない。きっと早く切り捨てないと厄介だ、とでも頭の片隅で思ってるんだろう。彼は誰かを庇う嘘だけが発達したらしい。「悲劇」

お互いとんだペテン師だった。どちらも陥れるために近寄ったわけじゃないのに結局は相手を探ることばっかり考えていたのだ。こんな性格、自分は嫌いじゃないよ。にい、と口元が上がる感覚がした。それにつられた古市くんが光を遮断した瞳のまま同じく口元を上げて「笑顔」よりも「不満」

「やっぱり女の子がすきだったんだねー」
「そりゃあ、当たり前ですよ。夏目さんだけは特別だいすきでしたけど」
「あれ、別れる気満々じゃん」
「心外。夏目さんだって俺を捨てる気満々じゃないですか」
「…バレてたの?」
「付き合った直後から」
「まいったなあ」
「わあ、全然平気そうな顔」
「古市くんかわいー顔して性格悪かったんだね」
「はじめから気付いてたでしょう。」
「うん、もっと知りたくなって告白したんだ」
「何か知れました?」
「ガード硬かったねー」
「あはは、そんなことないですよ」
「まあ、もう知れそうなものないよ」
「そりゃそうです。俺だって自分のことよく知らないんですから」
「そうだね、俺もだ」
「お互い、飽きたんですよ」
「最近退屈だったなあ」
「他の人としあわせになって下さい」
「古市くんもね」
「あは、夏目さんがしあわせになったら考えてあげます」
生意気だなあ。もう右肩に触れる温もりはないと思うときらきらの彼が疎ましく感じてきた。あれ、これ別れたんだよね。今までの女のように打ってもこなかったし、なんかすっきりしないなあ。
タバコを手にするとちくり、と胸が痛い気がした。気がしただけ。


「無能」






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