クロス×ティキ 「ティキ、」 振り向くとそこにはとても懐かしい顔があった。元帥という役割をしておきながらも、クロスはふらふらと何処かに消える。一応恋人の俺に一言もなしに、だ。(わかってるだろ、俺がひきとめたりしないことぐらい) 「久しぶりだな」 俺は怒っているのか、自分の声に怒りがにじみ出ていた。醜いものが嫌いなこの男には俺は嫌われる対象なんじゃないかと思うぐらい、俺は醜い。(ひきとめたりしねえけど、つれてってとは言ったかもしれない)(お前についていくなら、終焉のシナリオなんて裏切れたのに) 赤い髪が揺れるたび、自分と銘柄の違う煙草がふわりと香った。いままで体が麻痺してたんじゃないかと思うほど、ぞわりと背筋が凍る。血が沸騰したように騒ぎだす。体が覚えてる、全身全霊で忘れかけてたクロス・マリアンという男を求めていた。(俺は、俺は、) 「ティキ、抱きしめてもいいか」 「…ハッ、あわない間に随分謙虚になったもんだな」 「お前は生意気なままだな」 すっ、と伸びてきた手に体が震える。頬に触れたクロスの指先が微かにふるえていることに気づきコイツも緊張するのかと笑いそうになる。クロスらしくない抱擁のしかたに、こんな感じで他の誰かを抱いたのかと嫉妬してしまう。 「…あいたかった」 ぼそり。耳元で呟かれた絞りだしたような声に泣きそうになる。勝手にどっかいったくせに、会いたかったなんて馬鹿らしい。なのに胸が騒ぐのはなんだろう、嬉しいと思ってる俺の心はなんだろう 俺も、と言えばこの甘さに負けてしまいそうな気がして何もいえないでいた。ただただ優しく抱きしめるその胸に頭を押しつけるしかできない。久しぶりに感じる温もりの痛さと甘さに耐えるために必死になって唇を噛み締める俺は滑稽以外の何者でもないだろうな(お前の暖かさに涙がでるよ) 突然強められた腕の力に息苦しさを感じながらも幸せだと思う自分は、なんなんだろうか 「あいしてたよ、クロス」 おれからはなれろ 090825 ←→ |
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