ねぇ、泣けないの(切千)
「本気だと思いました?」
「そんなわけないでしょ。知ってたさ」
恋人ごっこしすぎた、そろそろ遊ぶのも止めよう。と、彼は言った。彼は、笑っていた。だから、笑い返した。
「みなみー」
「どうしたんだよ千石」
「涙が出ないんだ」
「はい?」
彼は、本気じゃなかった。知ってた。ふり、したんだ。ホントは、知らなかった気付かなかった俺は、本気だった。
なのに、なのに。
「みなみー」
「どうしたんだよ千石」
「悲しいな」
「泣けないほど悲しいこと、か。無理して泣こうとするなよ、悲しすぎると、涙なんかでねぇし。困ったら手、貸すからさ」
彼は本気じゃなかった。俺は本気だった。好きだった。大好きだった。言葉じゃあ、表せないくらい。好きで、好きで、仕方なかった。
本当の気持ち、伝えたら泣けるかな。
すっきり、するかな。
ねぇ、泣けないの。
そうだ。君に伝え忘れたことが一つ。
「好きなんだ」
声が震える。あぁ、今なら泣けそうだ。
お題配布:DOGOD69
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