大嫌い、けど可愛い(切千)
正確に言うと。
俺はあの人が大嫌いである。
へらへら笑って、強くもないくせに、自分の運の強さに頼って選抜まできて。しかも女にもてるし、ジュース買いのパシリのじゃんけんも負けないし、髪の毛オレンジだしサラサラだし、白ランだし、顔良いし、ムカつくったらありゃしねぇ。
「そう思いません!?」
「それ、ただの僻みやんけ」
「忍足さんに聞いた俺が馬鹿だったっす」
「元からやろ」
「なんですって!」
というわけで、俺は山吹中の「千石清純」さんが大嫌いであるのだ。
「俺が、何だって?」
「うわぁ!」
忍足さんに文句を言ったとたん、すっとんきょうな声が、後ろから聞こえ、オーバーリアクションをしながら、俺は振り返った。
そこには、目をぱちくりさせた当の本人、千石さんがぽかん、と口を間抜けに開けていた。
「な、なんの用っすか?」
「え。だって、なんか君たちが俺の名前を出したでしょう?だから、なんなのかな〜って」
「あんたに関係ないでしょう」って冷たく言い放つと、俺は苛々しながら忍足さんの横を擦り抜けて、ミーティングルームへ向かおうと足をすすめようとすると、ガシッと肩を掴まれた。
掴んだのはもちろん、後ろでへらへら笑っている、千石さん。
「ねぇねぇ」
「なんすか」
「お昼一緒にどーですか?」
何で大嫌いなあんたと。
とか思って、断ろうと口を開いたとき、忍足さんがトントン、と人差し指で突いてきた。
振り向こうとしたら耳元で、「こいつ、色んなやつに断られてるんや。俺、これから跡部んとこ行かなあかんのや。堪忍な」って言ってきて。忍足さんは、そそくさと立ち去ってしまった。
俺が付き合えと?
「ねー、ダメ?」
「つっ」
すると、千石さんは首を傾げて、両手を合わせ、赤い舌をチロッ、と出して、困ったように眉をハの字にして。
頬をほんのり赤く染めていた。
「っそんなこと!」
「ん?」
「思ってないけどでもでも!…腹は減ったっす」
「ラッキー!」
「………」
正確に言うと。
俺はあの人が大嫌いである。
へらへら笑って、強くもないくせに、自分の運の強さに頼って選抜まできて。しかも女にもてるし、ジュース買いのパシリのじゃんけんも負けないし、髪の毛オレンジだしサラサラだし、白ランだし、顔良いし、ムカつくったらありゃしねぇ。
けど、でも。
「…かわいーとこ、あんじゃん」
あーあ、こんなんじゃ邪険に扱えないや。
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