それはもう一人の自分(切)
いつからかは知らない。いつの間にか生まれていて、侵食してきて、俺を蝕んでいったんだ。そいつはキレると、身体を赤く染め、髪を白く染めた。
普通の状態では、俺と全く同じ姿なのに。
けれど、俺はアイツが怖かった。
「俺に流されればいいのさ」
「その方がきっと楽しくて楽だぜぇ?」
「破壊の限りを尽くす!俺が潰してやるよ!」
その言葉に耳を傾けた。そして、勝って、勝って、勝って、負けた。こんなことなかったのに、何故、負けたんだろう。
いや、わかってる。分かってるからこそ、負けた理由を追い求めた。そして、またアイツが声をかけてきた。
でも、俺はその声を振り払った。
その次の朝の空は、清々しいくらい青い青い空で、何かを吹っ切った。いや、何かを無くした感覚に、朝の涼しい風があたって、その感覚が鈍くなる。
テニスは支障が出るどころか、身体が軽々しくて、いつも以上のプレイができた。
なんでこんなに、心も身体も軽いのだろう?
俺は、失ったものと向き合うことを恐れていた。また、飲み込まれるてしまったらどうしよう。もう、出てこれなかったら、と。
「…泣いてんの?」
向き合う勇気が出たのは、あいつの泣き声が聞こえたから。おれが傍に駆け寄ると、そいつは泣いた所為で充血した目で俺を睨んだ。
痛々しいその姿に、罪悪感を覚える。
「寂しい?」
俺はしゃがんで高さを同じにする。そして、こいつの涙を拭ってやる。こいつは、泣きじゃくった瞳を揺らしながら、また一つ涙を零した。
「一人でも平気だ」
「うん」
「だって、いつもそうだったから」
「うん、」
俺はこいつの言葉に、優しく相鎚をうつ。よしよし、と頭を撫でてやると、髪の毛のやわらかい感覚がやけに手に残った。
「でも、さ」
「うん」
「お前まで行っちまったら、俺どうすんの?」
一人で寂しい人は、俺だけじゃなかった。こいつも寂しかったんだ。でも大丈夫だった、俺がいたから。
「わるかったな。本当にごめん」
俺は同じ体格のそいつを抱き寄せる。優しく、優しく。すると、二度と離さないと言わんばかりに抱き返された。顔がほころぶ。
「二人でガンバロ?ずっと一緒だ」
ニッコリ、と笑ってやると、涙を流しながら、そいつもニッコリ笑い返してくれた。
その次の朝の空は、清々しいくらい青い青い空で、俺の手に残るあいつの温もりを糧に、今日も部活にのぞもうと思う。
お題配布:緋 桜 の 輝 き 、
赤目モード内なるあかやん。
こんなふうだったら滅茶苦茶かわええ。
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