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聞こえますか、僕の声(鹿牙)



手は、いつも擦り抜けるだけ。
気付いてくれた時は、すごくすごく嬉しかった。触れなくても、この声が、姿が、誰かに俺が、"ここにいる"と証明してくれたみたいで。

「シカマル、」

「んだよ。また"ありがとう"か?」


一番伝えたかったことがあった。そのとき、まだ勇気がなくて言えなくて、はぐらかしたけど。言いたいことが、あったんだ。

でも、お前は、もう。


「キバ。どこにいるんだよ?」

「目の前にいる」

事故にあったらしい。
幸い、軽傷ですんだけれど、帰ってきたときにはもう、俺の姿は見えなくなっていた。

「シカマル、」

「んだよ。また"聞こえてる?"か?」


一番伝えたかったことがあった。でも言えない。なぜなら、もう俺の声は聞こえなくなってきているから。意味ないんだ。



アロー、アロー。
聞こえますか?聞こえないなら残念。

「はいはい、もしもし?聞こえてますよ」


最後に伝えたいことがある。


(好きだよ)

聞こえなくても見えなくても傍にいるから。




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