ラフ・メイカー(鹿牙)
「もしもーし。聞こえてますか?」
何気ない一通の電話。
悪戯電話だと思い、ため息をつきながら切ろうとしたら、「ストップ!ストップ!」と止められた。
「悪戯電話なら遠慮するぜ」
「違うってば!」
「じゃあ何なんだよ」と苛々感をバリバリ出しながら言葉を返すと、そんなの気にもしていない様子で、「よくぞ聞いてくれた!」と張り切った口調が電話口から響いた。うるせぇな。
「俺は、ラフ・メイカー。お前を笑顔にしたいんだ!」
また新手の勧誘かと思い、俺は今度こそ電話を切ろうとした。しかし、電話口の向こうからギャーギャー聞こえてきて、やっぱり出来なくて。
「んだよウゼーな。で、ラフ・メイカーさんが、ウチに何の用だよ」
「笑顔にしたいって、言ったんだけど」
「はいはい、もう間に合ってます。じゃあな」
「ちょっと待ったー!」
「ウルセー、切るぞ」
「今お前んちの前にいるんですが!」
ガチャッ、と俺は電話を切る。そして、玄関に急いで走ると、鍵を開けて、チェーンも外して、玄関の重たく分厚い扉を開けた。
そこには、見知らぬ人じゃなく、顔馴染みの人。
「顔は忘れてないな。最近笑ってないって?」
地面蹴って、彼に飛び付いて、もう離れないように、強く強く抱き締めた。
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