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最果て
02






「もうお前来んなよ」

「え…?なんで?」

「友達いねーわけじゃねえんだから。それに休み時間も勉強するから。集中してやりたいんだよ」

「でも…」

「部屋も、しばらく入ってくんな」


あれは中学三年の夏のことだった。

昼休みに弁当を持ってやってきたナルトにぴしゃりと冷たくいい放った。
この教室にも、部屋にも来るな、と。


べつに勉強なんかしなくても、ゆうに特待枠で入れる高校だったけど。


受験を口実にして、引き離した。


「……わかった」


しゅん、と泣きそうな表情を浮かべて去っていく弟――


「あーあ、かわいそー」

「可愛い顔がこんななってたぞー」

いつも一緒に飯を食べるクラスメイトたちが俺に文句を垂れた。


「…うるせえな」


――これだから、嫌だったんだ。

こいつらは、ナルトのことを「可愛い」とか「好き」だとか、平気で言う。
それはほんのたわいもない会話かもしれないが、


『俺もー』

なんて、笑顔を振り撒くあいつが気に入らない。


無邪気で人を疑うことを知らないナルト。
不純物だらけの俺の思いにすら気付かない。


だから守るよりも、突き放すしかなかった―――



「どうしたんだよ。喧嘩でもしたのか?」

「…いや…」




別離の決定的な出来事は、昨晩にあった――



「サスケってばまだ勉強してんの?」

「ナルト…まだ起きてたのか」

「ん〜、机で寝ちゃってて…さっき風呂入ってきたんだ」


薄暗い部屋でも映える金色を濡らして、薄いシャツ一枚の姿で、ナルトはやってきた。
水滴を吸ったそれは、うっすらと地肌を透けさせている。

俺は慌てて視線をそらして、ノートに向き直った。


「そんな格好だと風邪ひくぞ」

「だってあっちぃんだもん」


そう言ってから、俺のベッドへと倒れ込んだ。
ぱふん、スプリングが跳ねる音がする。


「ふあっ…ねみい…」

「さっきまで寝てたんだろが」

「でも眠いってば…う〜」

枕をきゅうっと掴んで、擦りつける。甘える猫のような仕草で。


「ん…」


その際にもぞもぞ動くナルトの細い脚。
はだけた隙間からみえる、鎖骨や太ももを、月のひかりが照らしていた。


ああ、触りたい――なんて。



「――っ!」



おもわず口元を押さえて、俺は部屋から飛び出していた。



「サスケー…?」


ナルトの制止も無視して。



「っはぁ……」


性急に風呂場に駆け込んで熱いシャワーを浴びる。




これ以上我慢出来ない、と茫然と思った。


鮮明に浮き上がる、ナルトの肢体。

あの細っこい脚を思いっきり開いて、中にぶち込んで、ぐちゃぐちゃに犯してしまいたい。
喘ぐ声を聞いて、あの瞳をもっと近くで眺めて、快楽を教えこんで――



「……くそ」



なに、考えてんだ俺は――

湧き上がった思いの暗さを掻き消すように、浴槽の壁を思いきりに殴り付けた。









フラッシュバックする過去。

突き放したあの日から、俺たちは遠く離れてしまった。


いつからか、好きになっていた、
実の、双子の弟と―――


離れていれば、きっとこの誤った気持ちも、いつかは消えてくと思った。


けど、消えない。



あの頃よりも、もっとずっと、
あいつが欲しいと思ってしまっている。



それは、叶わぬ、"恋"。




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