最果て
番外編 (ナルト視点)
*奇憚
カタカタカタ…
電車の揺れる音がする。
わずかに、それは遠くに。
家を出て、二番目の角を曲がれば、電車の線路が見える。
毎日毎日、飽きもせずに通る山手線。
カタカタカタ…
耳を澄ませば、聞こえる。
近づいては離れていく機械的な音。
過去から未来へと繋がっている、音。
遠い昔の、幼い頃に、――兄とふたりで乗ったことがあった。
『うわっ…すげぇ!すすんでるっ』
『家が米粒みてーだな!』
はじめて自分たちだけで行ったばあちゃん家。
はじめて乗った、おおきな電車。
空のように、真っ青な色をしていた、ブルートレイン。
街がぐんぐん遠ざかる。
知らない景色が広がる。
――このまま、どこか知らない世界へと、いってしまうのかとさえ思った。
繋がっている。
あの頃に。
今に。
「なにしてんだ?」
「っ……」
冷厳とも言える声が、俺を現実に連れ戻した。
「さす、け…」
ベッドで丸く膝を抱いていた俺を潮笑うかのように。
「またそんなとこでうずくまって…」
「……」
「――なんで泣いてんだよ」
「……っ……」
――わかってる、クセに。
知らない振りをして、そうやって、あなたはいつも、触れる。
「……ナルト」
「…あ、」
力強い腕が、俺を捕まえて、冷たいままのベッドに絡まった。
首筋にチクリと痛みが走って、顔をそらしたら、唇にぶつけるようなキスが降ってきて。
「っんぅ……ふ…っ」
乱暴に絡まる舌。
頭が溶けそうになるほどに抱き締められる。
「…んんんっ」
「は、」
おおきく脚を開かされて、次に降りてきたのは、掘りこまれた快楽だった。
「…ナルト、愛してる」
「……うっぁあっ…」
言わないで。
愛してる、だなんて。
あなたを抗えない俺をどこまでもおとしめる言葉。
「……なぁ、おまえは…?」
カタカタカタ……
俺は、その音を聞くたびに、胸が苦しくなる。
戻れない過去。
罪深き関係から抜け出せなくなった俺たちを置いていく、青い電車。
「"愛してる"って、言えよ……」
ああ、ねぇどうか。
俺たちを乗せて、あの頃に連れていって。
――サスケに惹かれていく、けっして許されることはないこの壊れそうなこころも、どこか遠くへ。
誰も知らない街へと。
「…あいしてるっ…」
二度と、触れられない場所に。
end*
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