気になるあの子 気になるあの子 恋をしている。前々から可愛いと思っていた、近所のコンビニ店員の女の子。木土日の夕方、必ず居る。 ずっと可愛い子だなと思っていたけど、完全に恋に落ちたのはつい昨日のこと。 俺がうっかりお釣りを受け取り忘れて店を出ちゃった時、わざわざ外まで追いかけて渡してくれた。柔らかな笑顔と優しい声に、ハートを射抜かれてしまったのだ。 俺はほとんどと言っていいほど恋愛経験が無い。見た目は地味だけど、性格だけは明るいので男友人は沢山居る、けど女の子には全然モテない。 だから俺は、幼なじみであり一番の親友、ウーミンこと海(うみ)にメールで相談をすることにした。 ウーミンは超モテ男だ。こいつは男の俺から見ても悔しいことにかなりのイケメンだ。うなじを隠す長さの明るい茶髪をハーフアップにしていて、なんというか…見た目はTHE チャラ男って感じだ。てゆうか実際チャラい。飽きっぽいのか3ヶ月おきくらいに彼女が変わるけど、彼女たちはみんな可愛くて綺麗な子ばかり。しかも俺が憧れている女の子ばっかり。むかつく。 正直、こいつに相談とかちょっと屈辱的だけど…背に腹は変えられん。 ということで、ベッドに寝っ転がりながら未だスマホに替えていない携帯でポチポチと文字を入力する。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:29 To 松原海 Sub どうしよう ウーミン、相談があるんだけど。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 返信は、すぐに来た ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:29 From 松原海 Sub (non title) どしたのテルちゃん。何でも言いなよー また宿題わかんないとか?(笑) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ テルちゃんってのは俺のあだ名ね。因みに本名は金橋 輝(かなはし てる)。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:30 To 松原海 Sub Re: ウーミン俺、好きな人が出来た!! ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ あれ?中々返事が来ない… あ、来た来た ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:45 From 松原海 Sub Re: 誰 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ なんか素っ気なくね?つうか返信遅れたわりに一言だけかよ。と思いつつ返事を打つ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:46 To 松原海 Sub Re: 近所のコンビニ店員さん!一目惚れしたんだよ、まじ天使なんだって、笑顔が素敵なの。 どうやってアピルべき? モテ男のテク教えろくださいお願いします! ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ この際プライドは捨てよう。 あ、返信来た来た。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:47 From 松原海 Sub Re: どんな女?それによってアピり方も変わるっしょ。名前とかわかる? ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ なるほど…相手によって変えるのか…さすがモテ男だ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ Data 3/08 17:49 To 松原海 Sub Re: 黒髪ショートで、目がぱっちりで笑顔が可愛い子だよ。俺、実は黒髪好きなんだよねー。ショートヘアーなのもポイント高い。 名札には伊藤って書いてた。下の名前はわかんない! ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 送信っと… どんなアドバイスしてくれるのかな〜 ってドキドキしてたのに、その日はもう返事が来なかった。なんだよう。 あいつ…さてはめんどくさくなったな! まあいいや…明日、じゃダメだな。今日は金曜日だからー…月曜日、学校で直接聞こうっと。 そういうことで、この日はとりあえず寝た。 日曜日、俺は彼女に一目会いたくて近所のコンビニに来た。日曜日だから必ず居るはず…と思ったのに、見当たらない。もしかして裏に居るのかな? どうしようかな…いや、ウジウジしてても仕方がない。こんなんじゃウーミンにも笑われるだろ。男になるんだ、金橋輝! 俺は意を決して、グミを買うついでにさりげなくコンビニ店員の男の子に声を掛けた。彼は昔から世間話をする程度に仲良しなフツメン店員だ。 「あの…いつもの女の子、今日は居ないんですね」 「え?ああ、伊藤ですか?彼女なら休みっすよ」 「そ、そうなんですか」 「デートらしいっす」 「…え?」 なんだって!!?? 俺が唖然としていたら、店員さんがニヤリとした。 「あ。お客さんもしかして伊藤狙ってました?実は俺もだったんすよー伊藤可愛いですよね」 「はい。めっちゃ可愛いから好きだったのに…」 「でもあいつ昨日、イケメンにナンパされてバイト終わりホイホイ着いてってましたよ」 え…そんな軽い子だったんだ… 「しょせんみんなイケメン好きか…」 うわあああ。彼女のイメージがどんどん崩壊していく… さようなら、俺の輝かしい恋… いや、でもこれは良い笑い話というか良い話のネタになるな。明日ウーミンに話そう。笑い飛ばしてもらおう。 翌日…教室に入ってきたウーミンを見て驚いた。 「おはよーウーミン!…っていうか、お前髪黒に染めたの?しかも切った?短くなってる」 「テルちゃんおはよ。うん、好青年目指そうと思って」 「へえ、似合ってる似合ってる!」 チャラさが軽減してなんかイイ感じになってるウーミン。イメチェンかあ。イケメンは何してもかっこいいな。 まあ、それは置いといて。 「ウーミン聞いてよ!実は昨日さ…」 話をしたら、予想通りウーミンは笑い飛ばしてくれた。だから、俺も何だかスッキリしたというか、前向きな気持ちになれた。 帰りに、失恋記念にマック奢ってくれるってさ。やったあ。持つべきものは親友だ。 「でも、可愛かったなあ…伊藤さん…はあ…」 「でもさあー、テルちゃんにはそんなやつモッタイナイよ。ナンパされて即着いてくとかービッチじゃん?むしろ、早めにわかって良かったしょー」 「なんかもう複雑だわ…」 「そんな女に近付いたらさあ、テルちゃんみたいな可愛い童貞くん、すぐ食べられちゃうよおー」 「童貞言うな!!いや童貞だけど!!死ねヤリチン!!」 やっぱ俺は、こうやって友達とふざけてじゃれあってるときが一番楽しいやー。 当分恋なんてしないぜ! End. テルちゃん、早く気付くんだ…! |