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ペットボトル事件


資料室事件


ども、柚希ですよ。
世界史の授業なう。あと5分でチャイムがなるという所で先生がおもむろに口を開いた。

「今日は…7月18日…だから、7番の瀬上と18番の沼田。資料室の掃除頼む」

なんてこと。瀬上って、俺のことじゃあないですか。めんどくさいなあ。さぼろうかなあ。

「因みに、断ったら平常点からマイナス10」

なんて横暴な。

沼田くんかあ…まあ、大人しめな子だし良いか。三城のグループのやつらと一緒じゃなくて良かった…
そう、ホッとしたのもつかの間。

一人のチャラい男子生徒(三城のグループのやつ)がガムを噛みながらだらしなく手を挙げて発言。

「せんせぇー、沼田くんは今日休みで〜す」
「ああ。そうだ、そういえばそうだったな」
「瀬上くんなら一人で出来るっしょ!」

そう言って三城たちがギャハハと下品に笑い出すと、途端にクラス中にクスクス笑いが広まった。

あー…うん、でも別に俺一人でも構わな…

「そんな訳にいかないだろう。重いものをどかしたりもするし、一人だとかなり時間が掛かる。…よし、7月の7と18日の18を足して…25番。お、三城だな。じゃあ、瀬上と三城、頼んだぞ」

なんてこと…!!(2回目)
足すなよ先生!せめて、じゃあ19番。とかにしろよ!

ちょ、先生なに余計なことを…てか、や、えっと…

「せ、先生!」
「どうした?瀬上」
「俺、一人で大丈夫ですから!」
「いや…大変だぞ?」

一人の方が安全ですから!

「いや、せんせー、俺もやりますよ。瀬上クンと二人で」
「おお。頼む。ほら瀬上、三城もこう言ってる事だし」

…神様って残酷だ。
ニヤニヤしながらこっちを見てくる三城から目を背け、資料室どうにか火事にでもならないかな、と考えていた。




資料室は火事にならなかった。そして放課後を迎えた。
先生から渡された鍵で資料室の戸を開けると、埃っぽい空気が充満していて思わず眉を寄せる。換気のため窓を開けて、へこんで開けにくいロッカーを力任せに開けてホウキを取り出すと、俺は気合いを入れて掃除を開始した。

それから30分…掃除はまだまだ終わらない。頼まれた、棚の整理なんて未だに手を付けていない。


三城は…まだ来ていない。もしかしたら、もう来ないんじゃ…?


そんな淡い期待は、すぐさま打ち砕かれた。


「ネクラくん、ちゃんとやってるー?」

ガラリと戸を開けて、相変わらずニヤニヤ顔の三城が部屋に侵入してきた。

「み、三城…」
「うっわ…汚い部屋…全然進んでねえじゃん、まじ使えねえなお前。カスだわー…」

身勝手な言い分に流石に怒りが沸き上がってきて、俺は思わずボソリと小声で口答えをしてしまった。

「…遅れてきたくせに」
「あ?てめえ今なんつった?ネクラ野郎の分際で俺に口答えした?」
「……」
「…おい(あれ?マイハニーまじで怒ってね?やべーな…ここはもう、柚希と密室で二人きりになれると思ったら興奮しちゃってトイレでオナニーしまくってたら遅れましたって素直に言うべき…?言ったら許して貰えるんじゃ…よし、言)」
「うわっ!」
「柚希!?」

この際三城は居ないものとしよう、そう割り切りながらボロい椅子に乗って黙々と棚の上の方の高い位置にある本を整理していたら、雑に積み重ねられていた本がバサバサと落下してきた。
咄嗟に避けようとした俺は、バランスを崩し…
派手に転ぶ、と思ったが…寸前に三城が抱き止めてくれて事なきを得た。

「だっ…大丈夫か?」

三城が、こんなに焦った顔をしてるのは初めて見た。
…てか、助けてくれた…あの、三城が…

「あ、ありがと」
「…!」

相手がどんな奴であろうと、助けてもらったらお礼はしなきゃだよな…
俺は不本意なのを顔に出しながらも一応礼をし、三城から身を離すとそそくさと掃除を再開した。

「ゆ…、瀬上…」
「なに?」
「俺は、何すれば良い?」
「え」

驚いた。ちゃんと掃除する気あるんだな、こいつ。

「あー…じゃあ、そっちの棚整理して。年度順にファイル並べて…ください」
「っ…めんどくせえけど、仕方ねえ、やってやる」

口ではそう言っていたけれど、チラリと盗み見た三城の横顔はどこか嬉しそうで。

こいつ…意外と…


そこまで考えて我に返り、俺はブンブンと首を横に振った。

忘れるな。あいつが今まで俺にしてきた所業の数々。
そしてあの、忌々しいペットボトル事件のことを…!




End.



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あきゅろす。
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