ペットボトル事件
2
花粉症事件
「…くしっ!」
皆様こんにちは。柚希です。
冒頭からのくしゃみごめんね。俺軽く花粉症なんだ。
「何、お前風邪?クソ迷惑〜学校くんなよ。うつるじゃん」
なんだか楽しげな口調で俺にこう言った、こいつは三城。俺は思わず肩を強ばらせる。
元々大嫌いなやつではあったが、とある事件が起こった日からそれに更に「気持ち悪い」という要素が加わった。
あの日から、俺は今までとは違った意味でこいつを警戒していたが、相変わらず三城は俺をパシりに使ったり、イヤミを吐いたり、ねちっこい嫌がらせをしてきたり…
まあ、あまり変わらず。ただのいじめっ子三城のままだ。
願わくば、卒業までそのままで居てください。変なアクション起こさないでね。
もう構わないでくれたら一番良いんだけど…早く飽きてくれないかな。
そんなこんなで、いつも通りに授業を終え、さあ帰ろう。と思った矢先、ポケットの中の携帯が震える。電話…母親からだ。
「もしもし」
『おにーちゃん!』
「和希?」
電話越しに可愛らしい声が聞こえ、思わず頬が緩む。和希はもうすぐ5歳になる弟。母親の携帯を借りて電話してきたらしい。
『あのね、きょう、ぼくご飯つくるの手伝ったんだよ』
「おお、すげえな。なに?」
『ハンバーグ!ぼくが丸くしたの。早く帰ってきて?』
「超楽しみだわ。今帰るからな」
うあー…癒される。
年が離れてるだけあって、俺は弟が可愛くて仕方無い。多分ブラコンなんだと思う。あいつは天使だ。
『うん、おにーちゃん大好き!』
「ははっ、俺も大好きだよ。じゃあな」
電話を切って一息吐いたとき。ふと背後から強い視線を感じた俺は恐る恐る振り向いた。
そこには…
「うわ!?」
出たあああ!!
なにこのホラー展開。
三城が至近距離に立っていました。ビビりすぎて心臓が止まるかと思いました。
「ちょっと…今の電話なんなの」
しかも三城のやつ、すげえ不機嫌じゃん。めんどくせー…早く帰りたいのに。
「三城…くんには関係ないよ」
「まじうぜえ。電話しながらバカみたいにニヤニヤしてさあ、気持ちわりいんだよてめえ。視界に入るな。なにが“オレも大好きだよ”だ。ネクラのくせに一丁前に彼女でも居るわけ?調子扱いてんじゃねえよ!」
え……。
言い過ぎじゃね!?
しかも何か勘違いしてるし!
酷すぎだし、理不尽過ぎるし!
ドン引き。こいつ…頭が残念なんだな。
なんか、反論する気力も失せた俺と三城は、しばらく無言で見つめ合っていた。
…あ、やばい。
ちょ、クラスメイトA(名前知らん)窓開けるな。
花粉が入ってくるだろ…うわ…むずむずしてきた…目が、目がかゆい…
ぽろり。
思わず俺の目から、涙が零れ落ちた。
全く、これだから花粉症は…
そんな俺を見た瞬間、三城が急にうろたえ出した。
「ゆっ…(柚希!?どうしよう、流石に言い過ぎたかな?俺のバカバカ!カス!泣かせちゃった。泣き顔可愛いけど!勃ちそう。じゃなくて…どどどうしよう、嫌われたらどうしよう)?!」
「は?」
ゆっ…って何?
あーもう。わけわかんねえしめんどいし目痒い。
こんなやつに構ってらんねえな。
早く帰って薬飲も。
そんでもって和希のハンバーグ食う。
俺は目元を制服の袖で拭って、足早に教室を後にした。
三城はそのまま1時間くらいうなだれていた。
End.
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