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アーユーマイン?
11

「ちょーかっこいい!!」
「キャアア!」
「頑張れー!!」

体育館内には女子生徒の、まさしく黄色い声援が飛び交っている。それらを一身に受けているのはただ1人。
もちろん、瑞希ではない。

「綾瀬くーん!」
「今の見た!?咲人君スリーポイント決めたよ!」

咲人に決まっている。
そして当然、俺は面白くない。

「交代ー!三葉、入れ」
「うえ」

もう順番来たよー…つうか、咲人敵側じゃんか。それだけで大分やる気失せるっていうね。まあ、軽ーくやりますか。
自分達のゴール近くに居よう。あー…5,6時間目って何だっけ…そだ、化学。嫌だなー

「奏太、パス!!」

え?

ゴスッ

「奏太!?」
咲人が叫んでる。

シンと静まり返る体育館。

え?え?え?今、な…何…
ってか…痛あああああ!!

俺がボーっとしていた時、パスしようと飛んできたボールは見事俺の側頭部に直撃。あまりの衝撃に一瞬頭が真っ白になった。思わずヘナヘナとその場にうずくまる。


「うぅ…痛…」
「かな、大丈夫!?」

咲人が慌てて駆け寄って来て、しゃがんで顔を覗き込んで来た。大丈夫、って言いたい所だが、正直全然大丈夫じゃない。半端ねえ、頭グワングワンする。多分軽い脳震盪。だって、バスケのボールってかなり重たいし。…うわわ、そう考えたら更に頭痛くなってきた…
真面目に、今俺すげえ泣きそう。涙目になりながら目の前の咲人に目で訴えかけ首を横に振った。

「さきー…」
「かな、保健室行こっか」

腰に手が回されたかと思うと、米俵の様に咲人の肩に担がれる。俺、超カッコワリイ…
ボールをパスしてきたクラスメイトが不安そうに駆け寄って来る。

「奏太、まじごめん!大丈夫か?」
「ん…俺も、ぼーっとしてたから…」

考えてみれば俺の自業自得だ。
そして俺はそのまま咲人に担がれて保健室へと連れていかれた。

幸い授業中なので廊下を歩く人はほとんど居なくて、こんな情けない格好を大勢に見られなくて良かったと安堵する。いや、既にクラスメイト全員には目撃されてるんだけどね…

失礼しまーす、と保健室の扉を開けるが保険医の姿が見当たらない。ちょっと早めの昼休憩にでも出掛けたのかもしれない。

「ちょっと待っててね」

ベッドに降ろされた俺はゴロンと転がり痛む頭を抱えている。すると、咲人が氷を入れた氷嚢を持って来た。

「かな…かわいそうに…ちょっとだけたんこぶ出来てる」
「まじか…」

優しく頭を撫でられたあと、これまた優しく冷たい氷を頭に当てられる。俺は黙って咲人に任せきっていた。

「全く…奏太ってば本当ドジっこ」
「…その通りです」
今回ばかりは認めざるを得ない。

「でも、そゆとこ可愛い、好き」
「ケッ。じゃあお前変われよ、てか移れ、ドジが感染しろ」
「やだなあ、御揃いになったら何かあった時に奏太を守れないでしょ」

あまりの自分の情けなさにまた泣きそうになったその時、廊下から授業終了のチャイムの音が聞こえた。

「あ…昼休み。咲人、先戻っていいよ」
「んーん。奏太が戻るまで一緒に居る」
「いや、でも…」
「奏太は心配しなくていーの。ほら、寝なさい。奏太寝不足なんでしょ?」
「え」

なんでバレたんだろ、昨夜あんまり寝れなかったこと。クマとか出来てんのかな…なんか恥ず…

「俺がいっつもどれだけ奏太のこと見てると思ってんの。ちょっとの変化でもわかるっつうの」
「咲人…」
「大丈夫、授業の前に起こすから。おやすみ」
「ありがと、おやすみ…」

俺は、なんて良い友人を持ったんだ。と本日三度目のウルウルタイムを迎えた俺は、グッと堪えて目を瞑った。ここは咲人のお言葉に甘え、少し寝かせてもらおう。

昼休みが終わる時間になり、起こされるまでの間。まさか、俺の寝顔を咲人がずっと見つめていただなんて怖いことは微塵も気が付きやしなかった。


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