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アーユーマイン?
21

なんでだよ。なんでお前が泣きそうになってるわけ。

とりあえず咲人を部屋に招き入れ、テーブルを挟んで向かい合わせに座る。
正直あんなことをされた後だから少し警戒してるけど、さすがに隣の部屋に妹が居るのに変な行動は起こさないだろう。

それに、今を逃したらもう暫く咲人と会えないんじゃないか、何となくそう思ったから。

咲人はさっきから黙って俯いている。

俺は重々しい溜め息を吐き、咲人に切り出した。

「ラブレターのこと、聞いたんだけど」
「ラブ、レター…?」
「お前…俺に告ろうとした子、勝手に振ってたらしいな」
「……」

苛ついているのを隠そうともせずに言うと、咲人は眉を下げてなんだか情けない顔をしてまた黙り込む。その姿が俺を更に苛つかせた。

「ふざけんなよ、勝手なことしやがって」
「だって」
「俺が好きだからってか?でも、それは違うだろーがよ!」

バンっ とテーブルを叩いて怒鳴り付けると、ビクリと咲人の肩が震えた。
形の良い唇を噛み、普段は勝ち気な瞳を潤ませ、すがるように俺を見つめるその様を見て思わずほだされそうになるが、駄目だ。
甘やかしてはいけない。

「でも、好きなんだ…」
「だからそれとこれとは、」
「あんな奴より、俺の方がずっと奏太の事が好きだ」

ああ、目の縁に溜まっていた涙が、ついに零れた。形の良い頬を伝った其が、ぽたりとテーブルに落ちる。

「ずっと好きで…でも言えなかった、好きって…なのに、あいつは俺が言えなかった言葉を簡単に言ってのけて…。好き、好きなんだ。嫌わないで、俺を…奏太…」
「ちょ、泣くなよ…」
「…かな、俺かなが居ないと生きていけない。かなが俺の全てなんだ、お願い、お願いだから、離れないで…嫌わないで。かなが、好き…俺にはかなだけ…」

一度溢れた涙は止まる事を知らず、咲人はまるで子供みたいに泣きじゃくる。
こんな咲人は、初めてで。俺はどうすれば良いかわからなくてアタフタ。

同時に、何度も呟かれる「好き」と言う言葉に目眩がした。色んな意味で。

「なんで…俺なわけ?つーか、いつからなんだ…?」

箱ティッシュを咲人の膝に投げ、俺は前々から思っていた素直な疑問をぶつけた。
正直、こんなに好かれる心当たりが無いんだ。俺の何が、咲人をこんなにしたのか。
…そうだ、まだ言っていない重大な事があったじゃないか。
俺は鼻をかみながらグズグズになっている咲人をじっと見つめる。

「それから…咲人お前、まだ俺に隠している事あんだろ。…俺と出会う前のこと」

は、と咲人が息を飲んだ。

「…聞いたんだ?」

俺が映っている瞳がゆらりと揺れる。自嘲気味に口端を上げて咲人は目を伏せた。
やっぱり、中学生時代の噂は本当だったみたいだ。

「お前、俺に何も話してくれなかったよな」

なんつうか、ちょっと寂しい。
親友だと思ってたのに。何でも話せる中だと思ってたのに。

「奏太に、嫌われるのが怖かったんだ」
「そんな…」
「奏太、怖がりだし。不良見るたび俺の後ろ隠れてたし…」

あー……

俺超かっこわるいじゃん。

でも確かに、不良は怖い。否定できん。

「…奏太はきっと、覚えてない」

咲人が真っ直ぐに俺の目を見た。先ほどまでボロ泣きしていたので目元が赤いが、しかしその顔は凛としていて真剣そのものだ。

「俺が、奏太を好きになったのは…中学生の頃」



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