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アーユーマイン?
18

俺は自分の部屋のベッドにうつ伏せになり、学校で明日香ちゃんに言われた衝撃的な話を頭の中で何度も何度も反芻した。身勝手過ぎる咲人に、沸々と込み上げてくる怒り。今すぐに怒鳴り付けてやりたい。
ぎゅっと携帯を握り締める。が、どうしても咲人に電話が出来ない。

もう、頭の中がぐっちゃぐちゃで、どうしていいか分からなくて。ただ苛々だけが募って行く。

咲人の告白だとか、教室で机を蹴り飛ばした時の凍り付くような空気だとか、ラブレターの件だとか。
何から突っ込めばいいのやら。

「ああ、もう!!」

今日は水曜日。まだ水曜日。
今週あと2日も咲人と顔を合わせなきゃいけない?
…学校、行きたくない。

枕を引っ付かんで壁に投げ付け、俺はもうとにかく泣いて泣いて、その内考えることを放棄。

そして俺はそのまま、翌朝母さんに叩き起こされるまで寝ていた。
今日もネクタイが結べないまま、学校へ。
咲人と会いたくない一心でビクビクしていたけれど、咲人は木曜金曜と2日に渡り学校に来なかった。クラスの女子も、男子も皆心配そうに咲人の話をしていた。
俺はそれを耳に入れないようにして、土曜日のクラス会のことばかり考える事にしていた。
瑞希が色々問い詰めて来たって、適当にはぐらかして逃げていた。

そうして迎えたクラス会当日。

「お!三葉おひさ〜」
「カナタじゃん」
「うわ、変わってねえ。久しぶりー」

午後4時半、駅前の居酒屋に行けば、中学時代の懐かしい面々の姿が見られて自然と笑みが溢れた。

「かーなたっ!」
「!」

バシン、と強く背中を叩かれて思わず一瞬息が止まった。そのあと視界が覆われ、耳元で囁かれる。

「ふふ、だ〜れだ?」
「…ざけんな、廉(れん)」

ばれたあーとアホっぽい間延びした声で笑うコイツは、中学時代一番の親友だった廉だ。中学時代はこう、さらさらの黒髪でノンフレーム眼鏡な知的イケメンだったのに、こいつは高校に入ってから今時風に盛った茶髪にコンタクト。なんだかホストみたいになってしまっていた。
高校生になってから会うのは初めてだが、ブログやらコミュやらでこいつのプリクラや写メを目にしているから変わり様は知っていた。
だけど、改めてこうして面と向かって見ると、それだけじゃなくて。俺より少し高かった位だった身長は更に高くなっていたし、顔付きも精悍さが増していた。体つきも、少年というより青年に変化している感じだ。

「……お前、変わったよなあ」
「かっこよくなったでしょ?奏太は全く変わってないよね!」

ぐさり。…確かに、俺は幼く地味なままだ。身長だって大して変わってないし、筋肉だって増えてない。
つうか、自分でかっこよくなったとか言うなよ。台無しだよ。

「悪いか」
「嬉しいよ、奏太が奏太のままで。…あ、中入るってー。奏太隣同士の席にしよ?」

役に立たない慰めの言葉と共に腕を掴まれ、俺は居酒屋の中へと入っていった。



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