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アーユーマイン?
15

―もう、後戻りなんて出来やしない。

冷えていく思考、何も感じない何も聞こえない。

咲人、俺はずっと 優しくて、子供っぽくて、バカだけど勉強は出来て、かっこいい咲人が大好きだった。
自慢の友達、そう思っていたのに

それなのに

「嘘だ、嘘だ…!」
「…本当だよ」
「嘘って言えよ!俺、たち…ずっと…」
「奏太…」

ずるずる、足から力が抜け床にへたり込む。両目から溢れ出る涙は、まるでダムが決壊したかのように止まらない。目の前にある咲人の足にすがりついた。

認めたくない、こんなの。

「言ってよ…、友達だって…!言えよ、う…」

嗚咽混じりの必死の懇願。自分勝手過ぎるのは理解している。それでも、既にバラバラに砕けかけている「今までの二人」を繋ぎ止めておきたくて。

「…ごめん」

咲人から返ってきたのは、掠れた声の謝罪。表情はわからない。

俺は立ち上がり、逃げるように教室を抜けた。後ろから呼ばれる自分の名前、聞こえない聞きたくない。

必死で走って、走って走って。
いつの間にか、どうやって来たのかわからないが自宅に着いていた。

ただいまも言わず真っ直ぐ自分の部屋へと向かい、ベッドに転がりうずくまる。
ポケットで震える携帯は電源を切ってベッドの隅に放った。

今は、何も考えたくない、考えられない。
目を瞑る、耳を塞ぐ、呼吸さえ止めてしまいたくなる。








「あーあ…やっちゃった」

一人、薄暗い教室に取り残された咲人はぽつりと呟いた。床に座り込み、頭を抱え込むように前髪をかき上げる。端正なつり目の目尻は少し赤みを帯びていた。

(言わないつもりだったのに。でも、俺以外の誰かに告白されてあんなに嬉しそうにしてる奏太が嫌で)

静かな室内に溜め息だけが漂い消えた。
咲人の掌には血が滲み、床には数個の水玉模様が描かれている。奏太と話している最中から無意識に、爪が食い込むほどに強く握り閉めていた手。

(でもね、これだけはわかって欲しい。本当に奏太が好きなんだ。好きすぎるんだ)

「ねえ、聞こえてる?好き、好き…好き」

自らの膝に顔を埋め、咲人は何度も呟いた。単純な二文字の言葉。けれど何よりも重たい言葉。







1.ねえ、聞こえてる?end


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