アーユーマイン?
13
なんだ?もしかしてリンチ?とか色々不安に思いつつも女の子に着いていき、辿り着いたのは最近滅多に使われていない人気の無い旧資料室だった。怖い人が沢山待ち構えているのを想像していたが、その気配は全くなく杞憂だったようだ。
向かい合う女の子をじっと見つめてみる。焦げ茶色のロングヘアーの毛先はゆるく巻いてある。色白で、ぱっちりした目。ちょっとだけぽっちゃりしてるようだが、うん可愛い。
「ごめんね…教室は、人が来そうだと思って」
「あ、うん大丈夫」
「あの…三葉くん」
「はい」
「私」
「はい」
「好きなんです」
「はい」
「三葉くん…付き合ってください」
「はい。……はい!?」
俺!?
思わずすっとんきょうな声を出してしまった。だって、俺てっきり…いつものように咲人にラブレターを渡せだの二人きりにさせてだの、頼まれるかと思ってたのに。全く心の準備してなかったよ!
一瞬で顔が真っ赤に染まったのが自分でもわかった。
「え?な、なんで…俺?」
「私、三葉くんと同じ中学で」
「まじで?」
全く知らなかった。
「同じ、美化委員会だった時…一人で仕事してる私を手伝ってくれたの…」
「…ごめん、全く覚えてない」
「い、いいの!きっと覚えてないな、って思ってたから」
確かに俺は美化委員だった。まあ、なんだ。中学の時の俺、超ナイスじゃん!女の子の方からコクられるとか初めてだよ俺!やべ、咲人より早く彼女出来ちゃうんじゃねえか俺。
心の中で全力ガッツポーズ。
「すぐに、返事してとは言わないから…返事が決まったら、連絡下さい」
涙目で、真っ赤な頬でそう言い手渡されたのは可愛らしいメモに書かれたケー番とメアド。ああ、俺にもやっと久しぶりの春到来。
俺はもう鼻歌でも歌い出しちゃいそうなくらい御機嫌で自分の教室に戻る。
「奏太、どこ行ってたの」
ガラリ、と教室の戸を開けるやいなや、拗ねた様な声が掛けられる。見ると、俺の席に座り頬杖を付いた咲人がこっちを見ていた。会議、意外と早く終わったみたいだな。
「咲人、聞いて驚くなよ!」
「なになにー」
咲人の居る机に駆け寄り、ポケットから先ほど渡されたメモを出して眼前に突き付けた。
「俺、さっき告白された」
咲人から先ほどまで浮かべていた微笑みが消え、驚いたように目が見開かれる。まさか、とか思ってんだろうなきっと。
「C組の明日香ちゃん、って知ってる?なんか中学一緒だったらしくて」
「………」
「それが結構可愛い子でさあ。いっそ付き合っちゃおうか、なんて」
「何、言ってんの」
やっと口を開いた咲人の声は、今まで聞いた事がないくらい冷たさを孕んだもので。俺は思わずビクリと肩を震わせた。
なんだよ、こいつ…なんかすげえ怒ってないか?あれか。この学校の女はみんな俺の物なんだよ、とか思ってる訳?
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