お嬢様の決意
「美依、今から大事なことを言うからよく聞きなさい。パパの会社が以前からイギリスに進出したがっていたことをお前も知ってるね?実は今回、それが実現しそうなんだ。」
『本当!?良かったわねパパ!』
「ああ。だからパパもイギリスに渡って、色々やらなくちゃいけないんだ。でも一人で暮らすのは寂しいから、ママと一緒にイギリスへ行こうと思うんだが」
『待って待って!あたしはどうなるの!?』
初めて聞いたパパの転勤話(社長だから転勤じゃないか)に、あたしは動揺を隠せない。しかもママも行くってことは…
「そこなんだよ美依。パパとママとしてはね、お前にはここに残ってもらって家を守って欲しいんだ。」
『やっぱりかっ!まあ、あたしは別にかまわないけど…』
あたし一人でこの家でやってけるのかな?使用人さん達がいるから、実際は一人じゃないけどさ。それでも若宮の人間があたし一人、ってゆうのは何か心細い。てか思ったんだけど、寂しいからとか、そういうのは子供のあたしのセリフじゃないの?
「美依、不安だとは思うけど心配しないで。あなたが一人でも大丈夫なように、優秀な執事を雇ったから。」
ママは悪戯っぽくウインクしてあたしに微笑んだ。執事?それってもしかして…
「彼があなたの執事よ。」
ママの視線の先にいる人は、やはりあの六道さん。パパの横に立ったまま胸に手を当てて、微笑ましそうにあたし達親子の会話を聞いている。なるほど、それで"忠誠の証"なのか、と妙に納得してしまった。
「宜しくお願いしますね、お嬢様。」
『は、はいっ。』
深々とお辞儀されて、何だかこっちまで畏まってしまった。
「なーに美依、一生離れ離れってわけじゃないんだ。あっちでの仕事が一段落したら、すぐに帰ってくるよ。」
「そうよ美依、だからそれまでおうちを頼むわね。六道さん、その間娘をお願いします。」
「勿論です奥様。」
あたしももう16だし、親がいなくて生活出来ないこともない。(パパはママがいなかったら、寂しくて本当に死んじゃうかもしれないけど)
かっこよくて優秀な執事さんも雇ってもらったことだし、立派に留守番してやろうじゃないの!
お嬢様の決意
(それで、二人はいつイギリスに発つ予定なの?)
(んー、明後日?)
(早っ!)
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