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パリジェンヌ流恋愛論


長期休暇も昨日で終わり、今日からいよいよ新学期。社長令嬢(自分で言うのって恥ずかしい…)といえども、学校にはちゃんと行かなくてはならない。


「美依様、お車の用意が出来ました。」


『う、うんっ。ありがとう。』



あの日以来、あたしはなんか変だ。骸の顔が恥ずかしくて見れないし、会話もうまく出来ないし、何より……胸の奥が締め付けられるような苦しさに襲われる。



「では、お乗り下さい。」


『……!?む、骸が運転するの!?』


「クフフ、僕は美依様の執事ですから。」


今まであたしの送り迎えは専属運転手の鈴木さん(62歳)がやってくれてたのにっ!





───--



あたしの通う学校は所謂"お嬢様学校"ってやつで、親が社長だとか政治家だとか旧家だとかで生徒はみんなお金持ち。あたし達が着いたときには既に、校門の前に他のお嬢様達の車(勿論リムジン!)がずらっと並んでいた。


「では美依様、お気を付けて。」


『うん、ありがとう。』



骸は後部座席のドアを開けてあたしの手を取ると、丁寧にお見送りをしてくれた。どうしてだろう、こういう小さなことにも胸がドキドキしてしまう。



「美依ーっ!おはよう、久しぶりっ!」


『瑠香っ!本当久しぶりだね!』



隣に停めてあるリムジンから出てこちらに駆け寄ってきたブロンドの美少女は、あたしの親友で幼なじみの西園寺瑠香。休暇中はずっとパリに居たみたいで(彼女のママはフランス人)、あたし達はその間一度も会っていなかった。


「美依に会えなくて寂しかったー!話したいことも沢山あるのよ?あのねっ、」


『はいはい、教室に着いたら聞いてあげるから。』


あたしにむぎゅっと抱きつく瑠香を引き離しながら(可愛いけど歩けない!)、骸にバイバイと手を振った。そして二人並んで校舎に向かって歩き出す。




「ねぇ美依、あのカッコいい人誰?」


『えっと、彼はあたしの新しい執事の六道骸。メールでも言ったと思うけど、あたしのパパとママは今イギリスだから、骸が身の回りのこと色々やってくれてるんだ。骸は本当に優秀な執事なんだよ。優しいし気が利くし料理も上手いし、それに…』


「それに?」


『ううん!何でもない!』


骸にぎゅっとしてもらうと元気が出るの!なんて言ったら、瑠香に何と言われるか。(変に思われるに違いない)


「あーっ!さては美依、彼に恋してるでしょ。」


『な、何でそうなるのよ!』


「だって、」









骸さんのこと話してる時の美依、すっごい幸せそうな顔してるよ? 







違うよ、骸はあたしの執事だもん。

そう否定するが瑠香はまるで聞く耳を持たない。


確かに、最近骸を見るとドキドキしたり胸がきゅうってなったりするけど、それは恋なんかじゃない…、と思う。


「美依は昔からそういうのに疎いからなぁ。」



確かに瑠香は恋愛経験豊富。あたしにはこの気持ちの正体も分からない。


でももし、万が一、この気持ちが俗に言う"恋"なのだとしたら──尚更ダメよ。





だってあたしはお嬢様で彼は執事なんだから。














パリジェンヌ流愛論
(あの顔は絶対恋してる顔だと思うんだけどな)










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