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Buona notte, sogni d'oro


『あの…、骸。』


「おや、どうしました?」


『もう大丈夫だから、その…、』


僕の腕の中で泣いていた小さな主は、数分後にはいつも通りの姿に戻っていた。無意識に震えていたらしい肩の震えも止まり、どこか怯えるような目も今の彼女には見受けられない。むしろ今は抱き締められていることが恥ずかしくてたまらないのか、顔を真っ赤にしている。


「(本当に無理してる訳じゃなさそうですね。)あぁ、すみません。」


抱き締めていた腕の力を緩めると、彼女は腕の中から素早く抜け出し僕に背を向けた。(ちょっとショックなのですが)数秒静止した後そのまま無言でドアの前まで歩き、ドアノブを手に持った所で再び動きを止めた。


「お嬢様?」


『ねぇ、お願いがあるんだけど。』


「はい、何ですか?」


『その…、お嬢様、って言うのやめて。』


「?」


『名前で、呼んで……?』


振り返ったお嬢様の顔はこれまで以上に真っ赤で。返事をしない僕を不安そうに見つめている。あぁ、そんな顔、反則ですよ。


『えっと、嫌なら、』


「嫌じゃないですよ、美依様。」


名前で呼ぶと彼女は驚いた表情を浮かべたが、すぐに真っ赤な顔のまま嬉しそうな微笑みに変わった。隣に移動すると耳まで真っ赤なのが分かる。 


『別に、様もいらないのに。』


「いいえ、主人を呼び捨てるなんて執事の僕には出来ませんよ。」


少し不満げだったが、それもそうね、と言って彼女は納得したようにはにかんだ。


『じゃあ、今度こそ寝るわ。おやすみ骸。』


「はい、お休みなさい美依様。」


彼女の流れるような美しい髪に指を絡め、それにキスを一つ落とす。案の定彼女は顔を真っ赤にして、そのまま逃げるように部屋から出て行った。







ドアが閉まり、部屋には僕だけが残された。窓からは美しい月が見える。


「美依…」


そっと彼女の名前を口にした。これからあの小さく愛しい主を何としてでも守らなくてはいけないのだ、と強く胸に誓って。











Buona notte, sogni d'oro
(お休みなさい、素敵な夢を!)








 



あきゅろす。
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